昨日の3月27日、兵庫県小野市の議会は、“福祉給付制度適正化条例案”を可決したそうである。生活保護費や児童扶養手
当の受給者が、「給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に使っている」のを市民に監視・通報
させる案である。条例は、憲法に則って定めなければならない。これは、憲法を知らない人々が決めた初歩的な間違い。
全く、この憲法違反の“条例”は、誰が草案したのだろう?開いた口が塞がらない。人権侵害も甚だしい。だいたい遊興とは、何
をして遊興というのか?人それぞれ捉え方が違うではないか。私は、ゴルフを遊興と思っているが、これをスポーツだと思って
いる人もいるのだ。賭博に至っては、これは犯罪でしょう。警察のお仕事だわよ。
朝のニュースで小野市の市長が、この「福祉給付適正化条例」(どこが適正なの?)の事を「憲法とか言ってるんじゃないんです
よ。条例なんですよ。」?(条例は、憲法に反してはいけません。市長さんの頭の中は、混乱していますよ。)と言っているのを
聞いて、呆れかえってしまった。反対した議員さんは(日本共産党の議員さん)1名。権利に対して市民に“監視”させるなど言
語道断で、これに賛同する事は、人権侵害を認める事にもなる。この不当で憲法違反の条例に対して、市へは6割賛同のメー
ルが届いたと報道されている。この6割の賛同した方って誰でしょうね・・・・・?こんな不条理な条例を認めたら、明日は、わが
身・・・なのに。震災で為政者がよく使った「絆」と云う言葉は、時と場合によって都合よく歪曲解釈され、こういう場合は断ち切
ってもらいたいらしい。
日本の社会保障費は、先進6カ国の中でGDP比最低レベルだ。メディアが騒いでいる生活保護費の不正受給も約0.4%
(2010年)未満。この中の半数以上は、子どものバイト料の申告を「知らなかった」と云う悪質ではないものなのだ。為政者側
の都合の悪い情報は、メディアでは一切報道されないので、民は直ぐ騙されてしまうのだ。生存権を守る為にも小野市の“福祉
給付制度適正化条例”に抗議する。
☆兵庫県司法書士会の小野市福祉給付適正化条例案に反対する会長声明
(転載させて頂きます)【以下、転載開始】
兵庫県司法書士会 会長 島 田 雄 三 2013年3月26日
1、今般、小野市は、「小野市福祉給付制度適正化条例」案(以下、本条例案と言います。)を議会に上程されましたが、本条
例案は、以下のとおり人権侵害を招きかねない内容を含んでおりますので、当会として反対いたします。
2、本条例案は、「受給者」を「生活保護法や児童扶養手当法その他の福祉制度に基づく金銭給付を受けている者」及びこれ
らを「受けようとしている者」と定義し、「福祉制度の適正な運用」と「これらの金銭の受給者の自立した生活支援に資すること」
を目的にしています。そして、市民一般に対し、「受給者に係る偽りその他不正な手段による受給に関する疑い又は給付され
た金銭をパチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、その後の生活の維持、安定向上を図ることに
支障が生じる状況を常習的に引き起こしていると認めるとき」には、「速やかに市にその情報を提供する」ことを義務付け、その
ための「適正化協議会」及び「適正化推進員」を設置し調査を行わせるものとなっております。
3、まず、本条例案で市民一般に貴市への情報提供が義務付けられる受給者の行為として、
1.偽りその他の不正な手段による受給、
2.給付された金銭をパチンコ等の遊技、遊興に費消し、生活の維持・安定向上に支障をきたす行為、
3.賭博に費消し、生活の維持・安定向上に支障をきたす行為を全て同列に論じていますが、
1.はいわゆる不正受給、3.は刑法上の犯罪であり、本来は市民の誰もが自由に行い得るパチンコ等の遊技、遊興とは全く異な
ります。不正受給に関しては、福祉事務所において適切に対処することにより解決しうる問題であり、またそのように解決される
べき問題です。刑法上の犯罪である賭博に至っては、警察が取り締まるべきものです。それらを市民に監視させ通報義務を負
わせることには大きな問題があります。
4、更に「給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消し」その結果として、「その後の生活の維
持、安定向上を図ることに支障が生じる状況を常習的に引き起こしている認めるとき」とされていますが、「生活の維持、安定向
上を図ることに支障が生じる状況」を「常習的に引き起こしているかどうか」という判断は、一般市民の目から見れば憶測に拠ら
ざるを得ません。パチンコ等の遊技・遊興等それ自体をあげつらうことになるだけであり、社会保障制度利用者及び利用しよう
とする者に対して疑いの目を持つことを奨励することになります。ひいては差別と偏見を助長することにつながります。
5、憲法第25条の生存権の保障とは、具体的には人間の尊厳にふさわしい生活を保障するというものです。そして、人間の尊
厳にふさわしい生活の根本は、人が自らの生き方ないし生活を自ら決するところにあります。個人の自由な行動により自らの生
活に破綻をきたすことは由々しきことではありますが、だからと言って条例によって一般市民に監視させ通報義務を負わせると
いうやり方は、人間の尊厳を否定するものであり、憲法第13条で保障される個人の尊重、生命・自由・幸福の追求が不当に制
限される恐れがあります。
6、また、誰が生活保護等の社会保障制度を利用しているか、利用しようとしているかということは本来他人が知り得ないプライ
バシー情報であるにもかかわらず、一般市民にこのプライバシーに立ち入る過大な義務を課すことにより、受給者及びその家
族のプライバシーを暴き出し、指摘することが正当化されるという危険な風潮が作出される恐れがあります。市民が互いに敵対
心を抱き、疑心暗鬼となり、現に社会保障制度を利用している者、これから利用しようとする者を萎縮させ、その利用を躊躇さ
せるものとなります。これでは、本条例案に掲げられている福祉制度の適正な運用とこれらの金銭の受給者の自立した生活支
援に資することという目的に合致しません。
7、私達司法書士は、高齢者や障がい者に対する権利擁護活動、自死問題への取り組み、貧困問題への取り組み等、市民と
共に歩む活動を通じ、パチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等によって生活の維持、安定向上を図ることができなく
なるケースの多くにおいて、「依存症」や「発達障がい」という本人の意思や外部からの単なる強制のみでは改善の難しい問題
が原因となっていることを知っています。本条例案の発想は、このような理解をまったく欠いていると言わざるを得ません。本来
行政に求められるのは、医療的ケアやケースワークといった個々に対する「支援」の姿勢なのです。本当に大事なのは市民一
人一人の幸福のはずです。市民からの情報提供に基づき、調査・指導・指示を行うといった、画一的で強権的なものとならざる
を得ないシステムを作ったところで根本的な解決にはならず、むしろ逆効果となる恐れもあります。
8、以上のとおり、当会は、社会保障制度利用者及び利用しようとする者の権利を侵害する恐れがあり、社会全体に望ましくな
い影響を与える可能性のある本条例案の撤回ないし廃止を強く求めます。 以上
【転載終了】