かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

【メモ―フクシマ以後】 脱原発デモの中で (12)

2024年09月20日 | 脱原発

2015522

 気が付いたら715分前である。慌ててホテルを飛び出した。
 午後3時に会議は終わり、急いでホテルにチェックインして、6時頃までに宿題を終わらせようとパソコンを開いたのが徒になるもとだった。宿題といっても自分で自分に課したものだから、いくら遅れても誰も困らないのだが、終りが見えだしたので少し夢中になってしまった。
 「首相官邸前抗議」は午後630分から8時までだというのに、官邸前に到着したときはもう730分だった。東京で反原発デモに参加できる機会は滅多にない。わざわざそのためにホテル泊にしたというのに、なさけない。
 官邸前の抗議列のできるだけ前の方に行こうと国会議事堂横の緩やかな坂道を急いだ。抗議の列は国会記者会館の車の出入り口で途切れていて、その向かうが先頭のグループで、そこまで行こうと考えていたが、第2グループの先頭に目良誠二郎さんを見つけた。
 目良さんは、高校の社会科の先生だった方で、『非暴力で平和をもとめる人たち (平和と戦争の絵本 4)』 の著者でもあり、フェイスブック上でも社会問題、政治問題について積極的に発言されている。それで、私からFB友のお願いをしたのである。
 つい最近、目良さんの奥様が交通事故に遭われたというのでとても心配していた。かなりの重症で自宅療養中だということだが、米良さん自身は今日の金官デモに参加すると表明されていたので、お会いできることを期待していたのである。その怪我をされ奥様は、ナオミ・クラインの名著『ショック・ドクトリン』の翻訳者の一人である幾島幸子さんである。
 昨年の628日に『さようなら原発 首都大行進』というイベントがあって、雨が降る明治公園で初めて米良さんにお会いし、そのとき金官デモのお仲間を何人も紹介していただいた。今日も見覚えのあるお顔が何人か参加しておられた。その場で、むとうちずるさんに憲法9条タグも頂いた。私のザックに下げていた「NO NUKES FRAGILE TAG」も彼女たちのオリジナルである。とても活動的で元気なグループなのだ。
 抗議列の先頭近くで、しばらくは声を上げるというのが当初の予定だったのだが、いかんせん大幅に遅刻してしまった。国会正門前の集まりも見ておきたかったので、挨拶も早々に国会正門前へ急いだ。
 抗議の列を横目に、先ほど歩いてきた道を下っていった。列が途切れるようになると、さまざまなパフォーマンスで抗議をしている人たちがいる。デモのように移動しない定点行動なので、いろんなやり方で意思表示ができるのがいい。デモが多量性の価値なら、こちらは多様性の価値と言えそうだ。
 一人で太鼓と読経で抗議している人もいる。大きな絵を何枚も並べて意思表示をしている人もいる。国会正門へ曲る交差点の角では、一組の男女が優しげな声で「おやすみ、原発」と歌っていた。
 国会正門前に近づくと、大きな行灯(ぼんぼり?)を囲んでタンバリンや小太鼓などの打楽器を演奏しながら無言で踊っているグループがいた。
 さらに進むと、歩道脇の低い石垣の上に小さな灯籠(キャンドルライト?)がたくさん並べられていた。いろんな言葉によって、多くの人の願いや希望、祈りがここに集められて、光を揺るがせている。
 正門前ではスピーチが行われていて、遠目で断言しにくいが、私が着いたときにスピーチを終えたのはミサオ・レッドウルフさんのようだった。
 もう、時間がない。正門前でのスピーチをじっくり聞くこともなく、官邸前に急いで引き返した。抗議列の途中に入り、少しばかりコールに声を合わせた。官邸前ということもあって、仙台での金デモとはコールの言葉がちがう。「原発ヤメロ。アベもヤメロ。原発もろともオマエもヤメロ」というコールは、官邸前だから意味がある。直截に「オマエ」と言えるのはここしかない。
 まもなく抗議行動終了の8時になるので、目良さんたちに挨拶をしようとさらに前に進んでいったら、行動終了のアナウンスがあって、きっかり8時に解散である。なんとか挨拶ができて、写真を撮りあってお別れをした。
 「仙台も頑張っておられますね。」と目良さんが言い、「いや、人数が減って、なかなか戻りませんね。」、「こちらもですよ。」というやりとりをした。
 民主党政権のときは、大飯原発の再稼働を決めたりしたものの、いずれ原発ゼロを標榜していたので、反原発も勢いがあったが、安倍自公政権になってからは原発を止める気がないことが明らかになったので、一挙に長期戦の様相を帯びてきた。
 闘いや運動が長引けば、人が減ったり増えたりするのは当然のことだ。それでもコアの人たちが状況の変化に耐えて行動を続けていれば、また多くの人が参加する機会の受け皿になることができる。「続けることが大事ですよ。」と目良さんはあっさりと言われた。
 仙台の金デモであれ、官邸前抗議であれ、ここにこうやって集まって声を上げている人たちを私のこの目で眺めることが、私自身の心の活性化に、あるいは精神の気付け薬としてとても有効だということだけは実感することができる。

 


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