かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

【メモ―フクシマ以後】 脱原発デモの中で (11)

2024年09月15日 | 脱原発

2014125

 しばらくぶりで加美町から参加している浅野さんのスピーチを聞いた。二つのニュースを取り上げての熱弁である。
 一つは、宮城県知事が福島県知事に指定廃棄物の最終処分を福島県で引き受けるように要望して一蹴されたというニュースである。東電福島第1原発から飛散した放射能の汚染された指定廃棄物を自治体で押しつけ合うのが筋違いも甚だしいという話である。国と東電が責任を持って処分すべきものなのだ。知事がものを申すべき相手は国と東電のはずだ。
 放射能から県民を守る意識があれば自ずと採るべき行動は明白なはずなのだが、見るべき方向が逆転している。
 もう一つのニュースは、原発立地自治体である女川町でのアンケート調査で、町民の過半数は原発反対だったという結果に対して、女川町長は「原発の問題は全体の立場から考えるべき政治問題で、1地方自治体が判断できる問題ではない」と発言したということだ。 ここでもまた、住民を向いていない政治の姿がある。地方自治体の首長は、選挙で選ばれた政治家ではないのか。政治家として全体の立場から原発という「政治問題」に対して採るべき政治的態度を決めるべきではない。もう少し厳密に言えば、女川町民に対して最優先の政治責任を有する女川町長として、(全体のことを勘案しようがしまいが)原発に対する政治的行動を明確にする義務があるはずだ。
 知事も町長も、県民や町民に対する本来の責任と義務にまったく関心がないようなのである。それでもその職業から放逐されないあたりに、政治家が「profession」には含まれない理由があるのかもしれないが。ちなみに、professionに含まれる職業は「知性」とか「専門性」を必要とするものばかりである(と、英辞典に書いてあった)。

 

2015年38

 14:20頃に国会正門前につくと大勢集まりだしているが、スピーカーのテストなどでまだ準備中である。「国会前大集会」は15:30からなので、早く着いた人たちは、歩道沿いの低い石垣に腰掛けて待機している。もう石垣に空きはないので、私は立ちんぼで待機である。
 開始時間が近づくと、国会に向けてコールがあり、続けて「ジンタらムータ+リクルマイ&The K」による演奏、歌、コールがあって大いに気勢が上がる。
 主催者挨拶に始まり、政治家が到着順に登壇した。社民党の吉田さんと福島さん、生活の党の三宅さん、共産党の志位さん、藤野さん、池内さん、吉良さん、民主党の菅さんと続いた。
 ミサオ・レッドウルフさんの挨拶は迫力あるコールで終ったが、福島瑞穂さんと吉良よし子さんも最後にコールで挨拶を終えた。
 政治家のスピーチの後で、一旦、シュプレッヒコールで勢いを整えて、ふたたびスピーチが始まる。
 映画監督の鎌仲ひとみさんは上映が始まった映画『小さき声のカノン』の話と、福島に住む子どもたちの保養の重要性を話された。
 絵本作家の松本春野さんは、さまざまな事情の中にある福島の人たちに寄り添うことの大切さについて、市民電力連絡会の竹村英明さんは再生可能エネルギーへの転換がもたらす脱原発への道について、それぞれ訴えられた。
 雨宮処凛さんもスピーチの後にコールの声を上げられた。続いて登壇した小熊英二さんは、学者らしくとても冷静な話しぶりだった。311以降、社会の空気は確実に変わったこと、原発再稼働を目論む経産省にしても最大でも56基の原発しか稼働出来ないと考えているということから、仮にどこかの原発が再稼働しても311前とは大きく変わったことは間違いない、という話だった。
 ただ、小熊さんの話に参加者の1部は不満だったらしく、ブーイングが出た。パーフェクトゲームではなくても前進している、ということに対して不満があったらしい。パーフェクトゲームを望むというのは間違いではないが、冷静な状況判断も必要だろう。どのような運動でも、行け行けどんどんの人たちはいるし、その人たちが運動を牽引するエネルギー源になることは否定しないが、完璧主義は原理主義であったりする。そして、困ったことに運動集団の中では過激な原理主義がしばしば説得力を持ったりするのである。
 私は、小熊さんのような冷静な状況分析を貴重に思う。ただ、このような集会では、政治家のように「ともに闘いましょう」とかシュプレッヒコールで感情をシンクロさせるような話しぶりが歓迎され、冷静で客観的な小熊さんのような話しぶりは好まれないのだろうとは思う。しかし、感情を煽る演説には大きな落とし穴があることは歴史が示していることも確かだ。情熱と理性がともに手を携えて、などということはきれいごとかもしれないが……



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