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余剰次元と重力問題

2023-08-27 08:17:01 | ブログ
 7月に立教大学の村田次郎先生の「高次元を探るー高次元の時空(あるか謎)を実験で探す話」と題する講演を聴講した。村田先生のお話を聴くまでは、余剰次元とは4次元時空の上に拡張される6次元空間のことであり、余剰次元がつくる空間は、プランク長スケール程度に丸め込まれていると理解していたので、今までの認識とは違うことに気づき、先生のお話を基に状況を整理してみることにした。

 実は、1920年代にすでに、カルツァとクラインは、4次元時空の上に1つの空間を拡張した5次元時空において重力理論を考え、4番目の空間次元をコンパクト化して4次元時空の理論を構成すると、4次元重力と電磁場が現れる、という電磁力と重力の統一理論を提案した。

 物体のもつ慣性質量がその重力質量に等しいことが実証されているので、地球上に自由落下する物体は、物質によらず重力加速度が一定になる。先生の言われる「1cmの「地球」」とは、地球がもつ質量を圧縮して直径1cmの「地球」を想定するのであろう。そうすると、1cmの「地球」への落下実験に相当する加速度で粒子を衝突させれば、重力の作用をシミュレートする実験を行うことができる。

 先生によれば、0.1mm以下の空間については、重力のデータがないため、このスケールの空間では、電磁力と比較して重力が弱まってなくなるのか、逆に強くなるのか分からないとのことである。今のところ1cmの「地球」への落下実験に相当する実験のデータはとられているので、この距離を0.1mm以下にまでもっていき、重力の強さを測定するとともに、少なくとも1つの余剰次元が現れるのか否か観測したいというところであろう。

 4次元時空の場合、特殊相対性理論の基本則であるローレンツ変換は、時空対称性を保証する。よって、もし余剰次元が存在すれば、時空対称性が破られることになる。この実験には、「マイケルソン・モーリーの実験」の技法が使われるのであろう。

 地球程度の質量の球を半径9mmまで圧縮すれば、ブラックホールになるようだ。先生のお話では、重力の強さが電磁力の強さ程度になると、ブラックホールができるそうだ。ブラックホールができるということは、余剰次元の存在を意味するのか否かについては分からない。ブラックホールの特異点でアインシュタイン理論が破綻してしまうということで、ブラックホールを説明する完全な理論がまだないためだろうか。

 特異点を避けるようなブラックホールの構造として、特異点周辺を入口とするワームホールと呼ばれるチューブが存在し、そのチューブが宇宙の別の場所に出口をもつような構造が提唱されている。ブラックホールは、ワームホールを終端とするように構成されているのか、あるいは余剰次元となるコンパクトな空間で終端しているのだろうか。

 参考文献
 大栗博司著「重力とは何か」(幻冬舎新書)