「ここはどこれすか、わたすはだれれすか」
「八田さん、やっと目が覚めましたか
ここはバンコクのトンローのソニーエリクソンのサービスセンターですよ」
「僕はどうしたんですか」
「持ち主の話によると、バリ島の火葬見物で
ご遺体より先に八田さん、あなたが熱で焼けてしまったらしいですよ」
「それで僕は骨組みだけなんですね
顔が無いと誰だかわかりませんね」
「そうよ、みんな表面の顔が勝負なのよ
車のフロントグリルも、パソコンのフロントパネルもね
アンドロイドなんて中身おんなじなんだから顔だけが勝負よ」
「僕の持ち主という人はどこに行ったんですか」
「ああ、あの貧乏そうな日本人ね、タイは暑すぎるから今から沖縄に行く、とか
言ってたわよ、ひどい日本語の英語だったから、よくわからなかったけど
私のタイ語の英語といい勝負かもね」
「僕はこれからどうすればいいんですか、タイ語もしゃべれないし、来月はビザも無い」
「あの貧乏そうな日本人があなたを引き取りに来るかどうかね
1ヶ月来なければたぶん廃棄処分ね
ビザ延長はラオスにでも行ってくれば」