河童アオミドロの断捨離世界図鑑

ザスドラス博士の弟子の河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

色彩の薄いせわた兄弟の巡礼 第17話

2013年06月03日 | ソーラー農作園芸
「兄さんは、お母さんのお腹の中で、40年間何をしていたの」

「芸術家、アーティストになろうとずっと考えていたんだよ
でも40年目にやっと気づいたんだ
日曜画家や自費出版の作家ならいつだってなれるってね
問題はアーティストで収入が得られるかどうか
ってことだけが問題だったんだ」

「兄さん、そもそも、アーティストって何なの
カタカナにするとかっこよく思えるだけで
単に働かずに楽をして儲けたいってことじゃないの」

「そうなんだ
そこのところがよくわからなくなって
40年目に外の世界に出たんだが
人生はすっかり終わってしまってて
こうして巡礼の旅をしてるわけだ」

兄、瀬渡内三はそう言うと
空のかなた、まるで冥王星でも見つめるかのように
目を細め、小さなためいきをついた
梅雨なのに晴天の青空が少しまぶしかった

色彩の薄いせわた兄弟の巡礼 第16話

2013年06月03日 | ソーラー農作園芸
「俺はおふくろの腹の中で40年間ハマグリのようにじっと身を潜めていた
外の世界に出るのが怖かったからだ
でも40年間はもう胎児としては限界だと思った
それでちょうど、おまえ、海老三が外に出ようとしていたので
ついでに出てきたわけだ」

「でも、お母さんはその時30歳だったはずだよ」

「そうだ、おふくろの生まれる10年も前から俺は居たのだ
だからは俺はおふくろやおやじより年上だ」

「そうだったんだね、やっと謎が解けたよ
そうか、僕は人生を始めるために生まれてきて
兄さんは人生を終えてから生まれてきたんだね」