ゆめ未来     

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87分署シリーズ

2020年12月21日 | もう一冊読んでみた
警官嫌い/エド・マクベイン    2020.12.21    

「P分署捜査班集結」は、二十一世紀の「87分署」を意図して書かれた警察小説シリーズの第一作である。
とのことだったので、 『87分署シリーズ/警官嫌い』 を読んでみました。

出版は、昭和35年9月10日。
60年前になります。

 この小説に現れる都会は架空のものである。
 登場人物も場所も虚構である。
 ただし警察活動は実際の捜査方法に基いている。


ぼくが、興味を持ったのは60年前のミステリーであることと、当時の警察の捜査についてです。

このミステリのユニークさ(発表当時)が、「あとがき」を読むとよく分かります。

 「刑事には頭はいらない。頑丈な二本の脚としぶとい根性だけでいい」八七分署の刑事がそういっていた。たしかにこの『警官嫌い』には、明晰神のごときシャーロック・ホームズは出てこない。八七分署を職場とする公僕と呼ばれるサラリーマンが、しぶとい刑事根性で近代科学捜査の助けを借りながら、犯罪というものをつぶしてゆく職場ルポルタージュのようなものである。愚痴もこぼせば恋もする。酒も呑めば夫婦喧嘩もする集団の記録である。

物語は、古さを感じさせない面白さ。
舞台は、ニューヨークだろうと思われるが、時代背景も興味津津です。

 安アパートのなかにはいろいろの匂いがこもっていた。キャベツの匂いだけではない。キャベツの匂いを健全ないい匂いだと喜ぶ人間は多いし、キャベツと貧乏人を結びつけるよくあるご意見に異議をはさむ人間も多い。
 いわば安アパートのなかの匂いは、人生の匂いなのだ。
 人間生活のあらゆる作用の匂いだ。汗をかき、料理をし、排泄し、子どもを育てる匂いだ。こういう匂いのすべてが、わつと一かたまりのすごい匂いとなつて、一階の玄関を入ったとたんに鼻をつく。


 「ハンクというのは、頭のいい刑事だつたね」彼はキャレラにいつた。
 「私の考えでは、ハンクは自分はもう助からないと考えていたんだね」
 「いずれにしても、われわれがその撃つたやつについて、手に入れた手がかりは無駄にはしないのを彼は承知していた」
 「髪のことですね?」キャレラが訪ねた。
 「その髪がむしり取られたものだということは分かつだろう。
 彼は待ち伏せしていた犯人の顔から、かなりの肉をかきむしつているんだ」
 「それで、ほかには?」
 「血だよ、スティーツ。ハンクは相手を撃つている。」
 「ええ、それで、総合して何が分かります?」
 「かなり分かるよ」
 「ハンクの残してくれた手がかりを総合して、これだけのことははつきりしている」
 「犯人は男/成人白人/機械工/熟練工/色浅黒く脂性/ひげが濃い/過去二日以内に散髪/ 肥りすぎている男ではない/体重180ポンドぐらい」


 以後、鑑識がこのように判断した根拠の説明が続く。


    『 警官嫌い/エド・マクベイン/井上一夫訳/ハヤカワポケットミステリ 』
コメント
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