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捜索者/タナ・フレンチ

2022年07月13日 | もう一冊読んでみた
捜索者 2022.7.13

タナ・フレンチの 『 捜索者 』 を読みました。

あまり衝撃的な事件が起きることもなく、アイルランド西部の風光明媚な片田舎で p676 物語は淡々と展開して行きます。

シカゴで警察官として長らく務めてきたカル・フーバーは、娘アリッサに起こった暴行事件をきっかけに妻との関係がギクシャクし、離婚。
そんな折りウェブサイトで見たアイルランド西部の風景に感動して移り住む。
孤独な田舎暮らしと家の改修を楽しむ毎日の生活に、口数の少ない少年トレイ・レッディが関わってくる。
少年には、何か訳がありそうだ。
元警察官と村の問題児との関わりを通して人生を見つめる。

「訳者あとがき」 より
 単純明快だった善と悪の定義が現代社会においては複雑化しているうえ、絶えず変化している、と作者は言う。そして、カルのように物事をシンプルに考え、自分自身や周囲の人たちに対して責任を持とうとする人間はこの社会をどのように生きて
いくのだろうかと思い、本書の執筆を進めていったのだそうだ。したかって。善と悪やモラルについてトレイに説明しようとするカルの言葉には、それらに対する作者自身の考えが写し出されているのではないだろうか。
 



 気になったのは警告の伝えかただ。午後、ゲート越しにふたりでおしゃべりをしたついでに、マートが手短に伝えてくれてもよかったはずだ。なのにそうはせず、マートは密造酒パーティまで待った。カルによくわかるように、一度に何人もの口から聞かせたかったからか、あるいは、カルが警告を受けたことを全員に確実に知らせたかったからだ。後者の理由だ、つまりカルを守るためだ、という印象か強い。
 どのような事情で警告が必要になったのかか判然としない。どんな捜査においても最初はなにもわからないし、そんな状況に置かれることには慣れている。だから、この件はまったくの別物だと気づくのに時問がかかった。この村の連中がなにを知っていて、なにを信じているのかだけではなく、それをどう思っているのか、どうしたいのか、なぜそうしたいのか、どうやって成し遂げようとしているのかか皆目わからない。昨夜も、初めのうちは、何十年にもわたる親密なつきあいをうらやましく思っていた。だか、それが彼らをがんじからめにしている。行動も動機も覆い隠してしまうため、よそ者にはほとんど理解ない。それが作為的でわざとらしいという印象を------少なくとも幾分かは------もたらすのだ。カルのようなよそ者はそれに惑わされる。これはカルに対する個人攻撃ではない。そうやってよそ者の目をくらましておくことが、彼らにとってはあたりまえの基本的な予防措置なのだ。


  『 捜索者/タナ・フレンチ/北野寿美枝訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 』



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