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一億円のさようなら/白石一文

2023年07月10日 | もう一冊読んでみた
一億円のさようなら 2023.7.10

白石一文の『 一億円のさようなら 』を読みました。

鉄平と二人で、食べて、飲んで、歩き周り、金沢の町を心ゆくまでおおいに楽しみました。
居酒屋、回転鮨、川辺の散歩。思い出深い場所場所。
また、一人でひょつこりと訪ねたい町。
p665時間の旅でした。

旅する途中で、鉄平がもらした言葉とは、
 「夫婦は恋人同士とは違うんだ。愛情で関係を支え合うだけじゃなく、信頼で支え合わなきゃいけない。そうでなきや何十年も一緒にはいられない。夫婦は愛し合う以上に信じ合う必要があると僕は思う」



 自分の立っている場所をなくすというのは、自分自身を失うことに等しい。他の動物に類を見ない強固で緻密な社会性を身につけ、それによって地球上に君臨する力を得た人間という種にとっては、集団の中で自らの存在を確認できなくなるというのは、社会的な死を意味するにとどまらず個体の死をも意味する。

 自らを信じられなくなった人間は、その事実に目をつぶりたくて、信頼すべき相手を裏切者と見做すようになる。

 ----どうしてこんな人生になったのだろう?
 ----一体いつの間にこんなことになってしまったのか?
 なぜ自分の人生はこんなにも味気ないものへと行き着いてしまったのだろうか、と首をかしげてしまうのだ。
 何かどういうふうに流れ流れて、かくなる境涯に追い詰められていったのか?
 その流れを変えることは本当にできなかったのか?
 まったく別の流れが、ほんのすぐそばを並走していたのではないか?
 そちらの流れに飛び移ることは本当に不可能だったのか?
 益体もない愚痴と妄想に過ぎないのだが、今頃になってしきりにそう思うようになっていた。


 子供というのは親を見て親を知るのではなく、自分自身の中に親を見つけて親を知るのだ。自らの体内に流れる血が、否応なく父親や母親との類似点を突きつけてくる。要するにそういうことなのだろう。

 そのとき私にははっきり分かったの。こんなお金があったら、これからの自分の人生は何をしても本気になれないし、楽しくもないし、きっと誰のことも信用できなくなるだろうって。それに、こんな大金の使い道ばかり考えていたら、それだけで一生が終わってしまうし、好きになって結婚した人も、お金のことを教えたらきっとおかしくなってしまうに違いない。生まれた子供たちだってろくな子に育つはずがない。だったら、こんなお金は最初からなかったことにするしかないんだって。

     『 一億円のさようなら/白石一文/徳間文庫 』



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