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警部ヴィスティング 疑念/ヨルン・リーエル・ホルスト

2023年05月29日 | もう一冊読んでみた
疑念 2023.5.29

警部ヴィスティング 疑念 』を読みました。

ある日、ヴィスティングは自宅の郵便箱から中身を取り出す。
チラシ広告がほとんどだが、手紙も一通届いている。
その手紙には、くしゃくしゃに丸めた後のばしたような皺の残っている紙が入っていた。

中央には数字が一行。 12-1569/99

12は、旧ボシュウグルン警察。
1569は、個別の事件番号。
99は、1999年。

なによりも気になるのは、事件の捜査に穴があった可能性に気づいた人物が匿名で接触してきたことだった。当然ながら目的はヴィスティングにモムラクの事件を再捜査させることだろう。
 正体不明のその人物は、通常のルートで問題を訴えてもまともに取りあわれることのない者にちかいない。なんらかの言い分かあるものの、話を聞いてもらい、真剣に受けとめてもらえるだけの信用を欠いた者。考えられる候補はダニー・モムラク本人しかいない。
 モムラクの名前をネットで検索してみたが、トーネ・ヴァーテランの殺害犯としていくっかの占い記事に触れられているだけだった。各種の人名簿にあだってみたものの情報は得られない。電話番号も住所も、SNSのアカウントも見つからない。禁固十七年の判決を受けたということはすでに仮釈放ずみだと思われるが、だとしても電子的な痕跡は一切残っていない。


この事件の捜査には穴があった可能性を匂わせる。
逮捕はえん罪か。
誰かが、ヴィスティングを操ろうとしている。
ヴィスティングが、真相を究明する地味なミステリだが、最後まで飽きさせない。
最後の最後まで、糾明は錯綜する。

えん罪を疑がわせる事件の犯人の名は、ダニー・モムラク。

 「モムラクはどんな男でしたか」ヴィスティングは訊いた。
 フランクマンは肩をすくめた。「ここにはあらゆる種類の受刑者がいます。たいていは自分の置かれた状況をどうにか受け入れようと、いろいろな形で適応していくんです。ダニー・モムラクにとっては、それが人を操ることだった」
 「どんなふうに?」
 「人を都合よく利用するんです。まあ、やつだけじゃありませんがね。獄中では自然と人を操ろうとするようになる。それだけが力を得る手段なのでね」
 「具体的にはどのようなことを?」
 {いや、ちょっとしたことですよ。通常の時間帯以外にも電話を使えるようにしたり、服を頻繁に洗濯に出せるようにしたりといったような、普通よりも多くの娯楽に参加するとか、好みの刑務作業を選ぶとか、やつは所内の売店の担当だったのと、模範囚として清掃作業を任されていました」
 「それは人気の作業というわけですか」
 「売店のほうはたいてい売り物の残りにありつけますからね、ポテトチップスの袋が破れたとか、そういったときに、それに煙草の販売も任されている。売り物の巻紙の箱から何枚か抜いておき、葉の袋のほうも中身をちょいとつまんんで閉じておくなんてことはしょっちゅうなんです。」


 『 警部ヴィスティング 疑念/ヨルン・リーエル・ホルスト/中谷友紀子訳/小学館文庫 』



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