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傷だらけのカミーユ/ピエール・ルメートル

2017年03月06日 | もう一冊読んでみた
傷だらけのカミーユ   2017.3.6

『2017年版 このミステリーがすごい!』 海外編 第6位

物語の終盤、ああ、よくある話だよね、と思わせる部分はあったが、面白いミステリーでした。
ルメートルは、やはり読ませますね。

 「どん底に落ちることなっても、誰かのためになにかを犠牲にできるっていうのは、そういう誰かがいるっていうのは、悪くないと思う」
 「この利己主義の時代に、なんとも贅沢な話じゃないか。え?」


 大げさなと思う人もいるだろう。だが愛する者を失い、しかもその死に責任を感じている人間にとっては大げさでもなんでもない。そういう経験は人を変え、二度と元に戻れなくする。

 事件や事故があると、手すりから身を乗り出さずにはいられないのが人間というやつだ。

 カミーユ-------
 いらいらしているのに、カミーユにはハンドルをたたくこともできなかった。ペダル操作を手元でする障害者用の車運転しているからだ。足が床から数センチ浮いてしまい、腕も短いとなるとほかに選択肢がない。こういう車の場合、ハンドルのどこに手をかけるかにも注意が必要で、うっかりして必要のないレバーやボタンを押せば道路わきに突っ込んでしまう。

 カミーユは孤独を感じた。あまりにも孤独だった。

 胸を引き裂くようなその思い出は決定的なものであり、いくら時が経っても、どれほど出会いがあっても、決して消すことはできない。

 愛する者と愛される者という昔ながらの分類を考えるとき、カミーユは自分がどちら側なのかわからずにいる。

 四十の女と五十の男が出会ったときにしゃべることなどたかが知れている。お互い人生の失敗を隠しはしないが、最小限しか語らない。自分が負った傷についても言葉少なに触れるだけで、ひけらかしたりはしない。

 強盗という商売は映画俳優に似たところがあり、一日のほとんどが待ち時間で、仕事そのものはほんの数分の勝負になる。

 同時にこの女性を理解したからでもあった。つまりフロランスの唇がぷっくりしているのは、若くありたいと願ってのことではなく、どうしようもなく愛が欲しかったからだと。

 あのまま地道にやっていればなんの問題もなかったのに、欲を出すからこうなる。だが世の中そういうもので、雇われ人はどうしたって雇い主になることを夢見る。

 必要なものがもっとも必要なときにやってくるというのは、そうめずらしいことでもない。


このミステリーは、この言葉につきるか。

 出会いというのはいつでもちよっとした奇跡だ。

  『 傷だらけのカミーユ/ピエール・ルメートル/橘明美訳/文春文庫 』


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