ゆめ未来     

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「約束」 絆の物語 

2018年04月16日 | もう一冊読んでみた
約束/ロバート・クレイス  2018.4.16

    2018年版 このミステリーがすごい!
    海外篇 第14位 約束


悪党どもは別として、登場する人々の愛と絆の物語でした。

彼らが食べた料理のひとつひとつも、ぼくには興味深かった。
住んでみたくなるような自然描写、米国の自然の豊かさがうらやまかった。

主人公は、コール組とスコット組の二組なのだが、同一の物語のなかでなぜ主人公が二組?
「訳者あとがき」を読んで納得しました。

    『モンキーズ・レインコート』 (新潮文庫刊)
    『天使の護衛』 (講談社文庫刊)

あとがきを読めば、誰しも、この2冊を読んでみたくなるだろうが、古本の値付けは2000円超だった。
これではため息が出る、読むのをあきらめました。

このミステリを読んでいて、ぼくの知らないことがありました。
そこで、ネット検索をしてみました。

  「追跡用添加剤」=「タガント」
  検索 タガント(本書より)

ぼくたちの世代には、あまりにも有名な映画の場面ですが、映画が好きな若者は別にして、今の若い人たちはどうでしょうか。

 『地獄の黙示録』でアメリカ軍のヘリコプターが『ワルキューレの騎行』を轟かせながらヴェトコンの村を破壊していく場面をスコットは連想した。

このミステリは遊び心に富んでいる。しかも、洒落ている。

 メリルは力なく微笑んでみせた。
 「ほかに知りたいことがあれば、いまのうちに訊いて。これから自殺しようと思ってるから」
 「わたしが降りてからにしてくれないか」 (※車から降りて)
 「ふふん」


 《美しい友情のはじまりに乾杯、チャールズ》
 なんと独創的。『カサブランカ』のハンフリー・ボガートの名台詞をもじっている。永遠の愛の告白ではないが、証拠としては充分だろう。

 「カサブランカ」の名セリフは、

    「君の瞳に乾杯」
    「ルイ、これが美しい友情の始まりだな」


 ジャレドが答えた。「もちろん! ガーデンローズには香りがあるんだ。こういうスタンダードローズのほうがうんと長持ちするんだけど、香りはしない。香りのない薔薇なんて、報われない恋みたいなもの、そう思わない?」
 「わたしもけさまったく同じことを考えたよ」


 「犯人は危険人物だ。計画的で能力もある。自分の身は安全じゃないという前提で動くように」
 スコットはなんと返してよいかわからなかった。
 [どうしろっていうんだ」
 「死なないようにしろ」


 「わかるよ。心が痛いのは」
 ジョンは声に出していった。彼女は心の痛みに終止符を打ちたかった、でもそううまくいくとはかぎらない。痛みにつかまってしまったとき、部隊がとるべき道はただひとつ。こらえるのだ、でないと痛みに殺られてしまう。


『約束』の読後感は、まことさわやかだつた。

 それでも人生は生きるに値する、いつだって希望はある、と思わせてくれる。それを声高に叫ぶのではなく、あくまでも行動によって語る。そこが読後感のよさにつながり、直球勝負のハードボイルドとも称される所以だろう。(訳者あとがき)

その通りです。

    『 約束/ロバート・クレイス/高橋恭美子訳/創元推理文庫



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