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「壁の男」 聞かなければ良かった物語

2017年10月17日 | もう一冊読んでみた
壁の男/貫井徳郎  2017.10.17

貫井徳郎著 『壁の男』 を読みました。
読まなければ良かったと思う悲しい話がありました。
おもしろかったが、やはり、読まなければ良かったと思うこと頻り。

もし、あなたが、おつき合いしている恋人の「異性に対する愛情表現の仕方、考え方」が、自分のそれと大きく異なっていたら、しかも、「その人が好きで好きでたまらない」、どう足掻いても別れられない、としたらどうしますか。
母と子、父と子の親子関係の軋轢。親は子を育てる。そして、その子も人の親になる、その先は。

第1章~第5章まで一気に読んでしまいました。

新聞で、この本の書評を読みました。
「ミステリーには、ラストの一行で読者の思い込みを覆す 『最後の一撃』 と呼ばれる手法がある。」とありました。
一般的に言えば、「どんでん返し」でしょうか。また、ひとつミステリの知識を得ました。

この物語から。

  伊苅重吾のもたらしたもの

 「他人の気持ちなんて、ぜんぜん想像できない。自分が同じ立場になってようやく、理解できるようになるんだ」

 今日と変わらぬ明日が続く日々に、風穴を開けた気分なのかもしれない。

  重吾の母の言葉

 「じゃああなたは、自分より足が速い人は無条件で偉いと思うの? ただ足が速いだけで、ひどい性格でも、偉い人なの? 才能があるからって、ただそれだけで人間の価値が決まるわけじゃない。

 「別に私は自分に才能があるなんて思ってないから、これは一般論よ。才能を誇ってもいいけど、だからって人を見下してはいけないと思う。才能に恵まれていることがイコール優れたことだなんて、ただの思い込みだから。同じように、才能がないことを引け目に感じる必要もない。才能がないから駄目だというのも、思い込みでしかないんだし。そのことはもう一度考えてみて」

 人と人との間にわだかまりを作るのは才能の有無ではなく、劣等感なのだとしみじみ実感した。

 言葉にすることでわかりあえることもある。だが、言葉がどうしても届かない場合もある。


  重吾の父の言葉

 「わかっていると思うが、おれは母さんに嫉妬している」

 「みっともないよな。そんなこと、おれにもよくわかっているよ。わかっているから、嫉妬を心の底に押し込めておこうと努力はしている。それでも、つい言葉の端々に嫌みが滲んじまう。小さい男だよな。自分の女房が才能を発揮し始めたら、それを一緒に喜ぶんじゃなく、僻むんだから。自分で自分がいやになるよ」


良き父と母です。
このような両親に育てられた重吾は、まともな人間として人生を送るはずでしたが.........。

    『 壁の男/貫井徳郎/文芸春秋 』


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