遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

細胞老化とカロリーコントロール

2012-06-28 21:26:13 | BIONEWS
名大、老化マウスのiPS細胞が若年マウスと同等の能力を持つことを実証(マイナビニュース) - goo ニュース
iPS技術で作った多機能性幹細胞は、細胞のオリジナルが年取ってようが若かろうが同等の機能を持っていたということでした。まあ、マウスでの実験ですが・・・。マウスはヒトよりもテロメアがずっと長かったり、テロメラーゼ活性が体細胞で十分あったりしてですね、つまり老化の仕方がちょっと違うのです。てなわけで、ヒトでも完全に同じに行くかというとやってみないと分からんのですが、まあ朗報であると言っていいでしょう。
細胞は分化する前の元になる細胞があります。それが幹細胞。これからつねに新しい細胞が供給されるから我々は生きていけるわけですな。大元ですから細胞齢も『0』なのですね。ほら、例えば、10代の母親からも20代の母親からも30代の母親からも生まれてくる赤ちゃんは0歳でしょ。生殖幹細胞の細胞齢が『0』になっているからです。チョー簡単に言いすぎてますが・・・まあ、そんなもん。逆に分化してしまった細胞をリセットして幹細胞に戻す技術がiPS。もちろん、人為的なのでそれがうまくいってないという研究例も報告されているんです。例えば、エピジェネティックな構造が元の細胞から幹細胞型へ完全に戻っていないとか。
細胞はその年齢を元に戻せる能力があります。じゃ、なぜ老化するのでしょう? 線状染色体、減数分裂、有性生殖、細胞老化・・・これらはきっとひとつのからくりに乗っかった解いても繋がった仕組みなのだと思っています。老化の研究をしているというと、「若返りの研究ですか?」とか、「アンチエイジングですか?」とか訊かれるんですが、違います。『正しく老化する』、それが研究の目標です。

mTORC1 in the Paneth cell niche couples intestinal stem-cell function to calorie intake. Nature 486, 490–495 (28 June 2012)
最新のNatureの論文です。小腸のニッチ幹細胞のお話なんですが、カロリーコントロールによる寿命延長の理由のひとつが仮説として提唱されました。マウスの腸では、カロリー制限によって自己複製能が増強された腸幹細胞の数が増えることが観察されました。これが細胞内の栄養状態のシグナル伝達のモトジメはmTORなんですが、こいつの信号経路がサイクリックADPリボースの分泌を促して・・・え? 面白くない?? なんで???
カロリー制限が寿命を延ばすのは、このmTOR系のシグナル伝達系が刺激されて幹細胞や前駆細胞の機能が保持されるからと考えられるのです。まあ、もっともな話しですが、酵母のような単細胞生物でもカロリー制限による寿命延長はあるので、幹細胞がどうとか言うだけでは説明がつかないと思ってはいます。ただ、酵母菌もTor遺伝子を持っていますから・・・というか、この遺伝子は酵母で最初にみつかったんだっつーの!w

良質な炭水化物中心の食事が最良-3通りのダイエットで実験(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版) - goo ニュース
カロリーコントロールにもいろいろありますよね。「良質な炭水化物中心のダイエット(食事療法)は、低脂肪ないし低炭水化物の食事よりも、体重を減らした状態をそのまま維持するのに役立つ可能性が高く、しかも体内で望まない副作用を誘発しない」んだそうだ。アメリカの研究者の言う『良質な炭水化物』がどんなものかが、問題ですよね。あいつら、ポテトチップスを野菜だと言っておかずに食べるような奴らですから。(笑)
この実験で好成績だったのは、低GIメニュー(総カロリーのうち炭水化物から40%、脂質から40%、タンパク質から20%を摂取するように配分したもの)だそうです。果物、野菜、ナッツや全粒穀物(糠となる胚、胚乳表層部といった部位を除去していない穀物)を中心とする食事だそうで、地中海ダイエット(地中海周辺で収穫される農作物を中心とした食事)に似たものだそうな。日本だったら、玄米食中心ってとこかなぁ・・・。

本日のお酒:KIRIN CLASSIC LAGER + 手取川 吉田蔵 純米
コメント
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