精神科看護実習では社会的入院患者を受け持ちます。
病名としてつけられているのが「残遺型(ざんいがた)統合失調症」と呼ばれる患者を受け持ちます。
残遺型統合失調症とは何か?というと、
「精神疾患が原因で長期入院しており、症状は落ち着いているが、退院に向けた活動がされておらず、家族からの協力が得られない人」
というイメージだと思います。
これは表向きの言い方で、実際の状況は以下の通りです。
「若い頃、家族とトラブルを起こし、家族同意のもと医療保護入院させられ、入院が長期化し
(関連因子)
①家族が非協力的で、退院受け入れを拒んでいること、
②精神科薬物療法により長期間に多量の抗精神病薬を投与され続け、向精神薬の副作用による、認知機能の低下、活動意欲の低下、薬剤性パーキソニズムや、
③安静という名目で、長期間に渡り、社会で働かなくても衣食住が満たされる代わりに、徹底して日常生活を管理され続けたことにより、「自己決定する力」「意思決定する能力」を失って「社会参加する」意欲が削がれたことによって、
(問題)慢性的な意欲低下により、自主性、自立性が欠如した状態」
です。
そして、看護課題テーマは「人間らしさ、自主性、自立性の回復」です。
自主性を奪うのは精神科特有の「心の寝たきり状態」を産み出した、医療過誤だと思います。
しかし、これは本人の意志決定を無視し、家族が同意して行われている「医療行為」が生み出したものであるため、当事者を除き誰も「人権侵害だ」と叫ぶことができません。
そして当事者は当事者で「仕事しなくて良い、3食昼寝付き」の生活に慣れてしまって、その環境から出てこようとしません。
「心の寝たきり」を産み出す要因としては以下の理由があります。
医療行為と称し「興奮や混乱を避けるため、安静を第一に看護した」と言えば聞こえは良いですが、実際は、放置プレイしておいても家族は何も言ってこないため、褥瘡ができてしまった寝たきり老人と同じ状態だと言えます。
高齢者の寝たきり状態が1カ月も続けば、筋力は低下し、いざ動こうとしても、体動による痛みや労作苦が生じるため、「寝たきり」廃用症候群になってしまうのです。
人間の精神(脳機能)も同じで、若くして社会から隔離され、仕事も家事や買い物、掃除もせず、全て世話してもらっていたら、年相応に獲得していくべき社会性は身に付かず、ましてや持っていた社会性や能力はどんどん失われていきます。
そして、「赤ちゃんのままで良い」「子供のままで良い」という精神レベルになってしまいます。
作為的、意図的に、精神レベルを退行させる、これが「心の寝たきり」「精神の廃用症候群」です。
「退院したい」「恋愛したい」と言ったり、時に、「他の患者やスタッフと意見の食い違いで口論になる」といった「自分で考えて、自分の意志を見せる」と
「病棟ルールを破るようになった、精神症状が出てきた、再燃してきた」と主治医に報告され、薬の増量をされたり、外出自由度制限をかけられたり、最悪の場合、保護室に隔離されてしまいます。
家族から社会から見捨てられた人(患者)の日常生活に「夢や希望を持ってもらうこと」
が、自主性、自立性回復に向けた第一歩となります。
本当に難しいと思いますよ。
精神科で働いているスタッフすら、「金や生活のため」だけに「定時に帰れる、寝当直の精神科を選んでいるだけ」なのですから、他人に夢や希望を語る事なんてできるはずありません。
せいぜい、「あなたは病気だからストレスに弱い」だから「ありのままでいいんだよ」「ストレス溜めるくらいなら無理しなくていいんだよ」と当たり障りない声をかけることしかできないのです。単なる甘やかしを、傾聴とか精神科看護と呼ぶのです。
民間精神病院は、出勤し、勤務時間はルーチンワークしていたら、定額の給料が支払われるシステムですし、利益最優先で、スーパー救急以外では、病棟稼働率を下げるような、退院支援をしなくて良いため、看護ではなく、患者に病棟ルールを守らせる、ルールに従わせる「安全管理」だけしていれば良いのです。
病院なのに、「退院させてはいけない」「退院意欲を煽ってはいけない」業務にやりがいがあるのか疑問です。
このように「看守と囚人」という力関係によって、患者のちょっとした発言に苛立ちを覚え、スタッフからの虐待にもつながっていきます。
社会的入院患者の多くは「退院して一人暮らししていく自信がない」という理由で退院を拒否します。
裏を返せば、「入院中、一人暮らしするための自信に繋がるような生活リハビリを全くしていない」ということです。
長年にわたり、「精神科医療、精神科看護」と言いながら中身は「自主性を奪うこと
」をされてきた人に、「自主性を回復させる関わり」をするのが精神科看護実習の本質です。
ですから、「難しい」と感じるし、これさえわかってしまえば、これほど簡単でシンプルな領域はありません。
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