JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

映画 「氾濫」

2008-06-06 | 映画(DVD)
今回のラピュタ阿佐ヶ谷、特集は「脚本家 白坂依志夫 -戦後日本映画を刷新した天才脚本家、その創作の軌跡」

「氾濫」1959年 大映東京 監督:増村保造 脚本:白坂依志夫

娘は恋愛を、青年は野望を、人妻は虚栄を、夫は情事を、かくて現代の欲望は氾濫する・・・

真田佐平(佐分利信)は接着剤サンダイトを発明し、一躍、平技師から三立化学の重役になった。--真田の妻文子(沢村貞子)は急に生活が変ると派手ずきになった。娘のたか子(若尾文子)と共に浮かれたように毎日を過す。突然、真田に戦争中関係があり、ひと時同棲していた西山幸子(左幸子)から連絡があった。他にも種村(川崎敬三)という若い学徒も接近して来て・・・一家に、アンバランスな狂躁の日々がやってくる──。

増村保造監督で伊藤整の原作に白坂依志夫が脚本。若尾文子も出演している戦後高度成長経済期の人間の欲望が渦巻く作品という事で期待して見ました。
期待のわりには・・・
若尾さん、確かに美しいのですが男に泣かされる娘役では盛り上がらない。完全に脇役でした・・・
しかし、嫌な人間が一杯出てくるのは良いです。

欲望のおもむくままに動く青年学徒(川崎敬三)が泣かす幼馴染(叶順子)、重役の娘(若尾文子)
女ったらしのピアノ教師(船越英二)が欺く、重役の堅夫人(沢村貞子)
お金のためなら息子を病気と偽り真田佐平(佐分利信)に身を投げ出す女教師(左幸子)
それぞれが開き直って、相手に吐く暴言が身も蓋もなく楽しいのです。

「お前の顔を見ていると田舎の肥溜めの臭いを思い出す」とまで言われてしまう泣かされ役として叶順子が、もう最高です。
この方はとっても不思議な人。決してブスではなく、むしろ美人女優のはずなのに、イモいブサイク娘を演じるとピタリと来るのは「鍵」同様。
結局、手切れ金もらって田舎に帰る潔さ。この映画に関しては同じ脇役でも若尾文子の役を大きく上回っています。

ピアノ教師に「鏡を見てみろ」と老醜を嘲笑され騙された沢村貞子。夫に対する不満だけが残り、虚無な日常を送る。「会社に行く」という亭主に返事もしないが、不貞腐れた表情で亭主の鞄を捧げ持つ姿が印象的。

左幸子の空襲時、佐分利信の腕の中で恐怖に慄く姿がとてもエロくて良ござんした。
そりゃあ真面目そうな男だって思わず・・・
重役を退いた佐分利信を捨てるシーンも見事でシビレます。

適役、中村伸郎(久我教授)にも注目。

「伊藤整さんからお褒めの言葉をいただいた。非常によくできたシナリオである、と。」 と自ら白坂依志夫が語るだけあって、奔流の如くある人々の心情を表現した佳作と思えるけど、何か物足りない。

今まで観てきた増村作品に比べおとなしい感じがするのは制作年代のせい?否、強烈な狂気氾濫物ばかり観てきたからでしょう。

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