「生誕100年記念 シネアスト安部公房」
「詩人の生涯」1974年 チャイルド・フィルム 監督:川本喜八郎 原作:安部公房 19分短編
原作安部公房、アニメーション川本喜八郎。搾取されるだけの工場労働者たちの苦しみと解放の物語。煤けた木炭画風切り絵アニメで、共産主義の象徴である赤いジャケツのみ色がついている。人物の表情はリアルすぎて怖いほど。冒頭の衝撃映像を始め、安部公房のシュールな世界観が表現されている傑作。
川本喜三郎のアニメ質感と湯浅譲二の音楽が良い。特に二人で即興的に演奏される音楽。サイレントにして生演奏で上映を観たい。
生活苦しい労働者と搾取する側。
疲れすぎて綿糸として巻き取られる母。上流社会に納める息子。
ネズミに齧られ赤く染まったジャケツで共産党へ乳頭。
「時の崖」1971年 Abe Estate 監督:安部公房/原作・脚本:安部公房
落ち目のボクサーが試合への不安を紛らわすように、そして不安が的中してノックアウトされてからも、自分に語りかけ続ける。ほとんど井川比佐志の一人芝居で、事態を反芻しては自らを鼓舞し、希望を持って打ち消す井川の絶え間ない自問自答が音楽のように響く32分間。リング上で倒れてからの10秒間が言葉によって無限に引き延ばされるラストは圧巻。安部公房が監督・原作・脚本を担当した唯一の映画。
原作短編はかなり昔に読んだが安部公房としては普通で物足りない印象だったと思う。
原作が原作だけに井川比佐志のモノローグの質が命だが、崖っぷちボクサーとして良い味が出てる。
ボクサーの孤独や意識の彷徨。
条文子のインサートが効く。
試合でダウンしてからの時間の流れ。マンガみたいで良い。
カウント4(フォア)から長いけど結局あれは天まで逝ったか。
シネマヴェーラ渋谷
2024年8月
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