構造的に整った文、“整句”を使った修辞表現の三回目は“頂真”です。それと、これまで3回の応用として、整句と散句を結合させる“錯綜”の表現技法を取り上げます。
(三) 頂真
“頂真”は前後のいくつかの文の間で、同じ成分の語が前後の二つの句をつなげることにより、前句が受け渡したものを後の句が受けるようにする修辞手法である。それにより文の構造が緊密になり、語意がつながり合い、聞くとすらすら流れるように感じられる。“頂真”は大部分が後の句の最初の語が、前の句の末尾の語(言語成分)を受けたものである。こうした表現は、しばしば、物語の最初のところ、或いは話題を変える合い間のところで使われる。例えば:
(16) 有個農村叫張家庄,張家庄有個張木匠。張木匠有個好老婆,
外号叫“小飛蛾”。小飛蛾生了個女儿叫“艾艾”,……
(17) 碎瓦刨光了,是一堆新土;新土出清了,是一塊木板;
木板掲起来,是一個大瓦缸;把缸上的稻草拿掉以后,原是満満的一缸百米。
・刨 pao2 (くわ、つるはしなどで)掘る
・掲 jie1 (ふたなどを)とる。はがす。めくりとる
・瓦缸 wa3gang1 素焼の甕
時には物事の道理を説明する際にも、頂真を使って結論を導くことがある。例えば:
(18) 我們要改造民主風気,要改変文藝界的作風,首先要改変干部作風,
改変干部作風,首先要改変領導干部的作風;改変領導干部的作風,
首先従我們几個人改起。
(19) 這真是座活山啊。有山就有水,有水就有脉,有脉就有苗,
難怪人家説下面埋着聚宝盆。
・聚宝盆 ju4bao3pen2 いくら取っても尽きない宝物を盛った鉢。
頂真は物事の間のつながりに重きを置く。これを用いて物事を描写することで、物事の間の時間や空間をはっきりと説明することができる。これを用いて物事の道理や感情を述べることで、物事の間に内在する関係を述べることができる。聞く人に一目瞭然で、厳密で抜けが無いように感じさせることができる。頂真は言語形式の上では、前後の文のつながりが緊密で、文の形式も比較的均整がとれていて、読むと一つ一つの句が互いに連なり、明快ですらすら流れるようで、情趣が次々に湧いてくる。
(四) 錯綜
これまで、整句を使った修辞表現を見てきたが、“錯綜”は整句と散句の結合である。時には語句が平板で単調になるのを避けるため、本来であれば整句の文型で書けるものを、わざと長短不揃いにし、変化に富ませる。このような修辞手法を“錯綜”と呼ぶ。“錯綜”の構造は複雑である。以下の例文で見てみよう。
(20) 通紅的太陽照満天,
今天咱們多喜歓,
報了仇,伸了冤,
抬起了頭見青天,
千年的鉄樹開了花,
万年的磐石把身翻。
・伸冤 shen1yuan1 =申冤:冤罪をすすぐ。ぬれぎぬを晴らす
・鉄樹 tie3shu4 センネンソウ
・盤石 pan2shi2 大きな石。盤石(ばんじゃく)
・翻身 fan1shen1 生まれ変わる。解放されて立ち上がる
(21) 看飛奔的列車,已駛過古長城的垜口,
窓外明月,照耀着積雪的祁連山頭……
・垜 duo3 塀の外や上に突き出た部分
(22) 她一説開了頭,許多受過害的人也都搶着説起来:
有給他們花過銭的,有被他們逼着上過吊的,也有産業被他們霸了的,
老婆被他們奸淫過的。
・上吊 shang4diao4 首をつる。首をくくる
・霸 ba4 奪い取る
・奸淫 jian1yin2 姦淫(かんいん)する。強姦する。手込めにする
(23) 我倒想起一个笑話:白人剛到非洲時,白人有《聖経》,人有土地;
過不多久,人有《聖経》,土地都落到白人手里了。
・聖経 sheng4jing1 聖書
(24) 射箭要看靶子,弾琴要看聴衆,写文章做演説倒可以
不看読者不看聴衆麼?
・靶子 ba3zi 的(まと)
例(20)の“把身翻”は、本来は前の句で構成された対偶句を受け、“翻了身”としても良いはずである。しかし作者はこの詩(歌詞)の押韻を考慮し、つまり詩を吟唱する時の特徴を活かし、“把身翻”と書くことにより、前の“天”、“歓”、“冤”と韻を踏ませている。これにより、最後の二行だけで対偶句を構成していたものが、その前の句とも連なり合い、全体で錯綜句となった。例(21)の二つの文は二つの事物を表しており、文型や構造は似通っているが、使われている詞組(短語)の構造が異なるため、言葉の調子が変化する面白さがあり、しかしその中に一定のリズムがあり、言語の“散”の中に意味の“整”が浸透し、ことばは自然で洒脱である。例(22)は意味の上では排比句であるが、錯綜句を使って表現している。これは強調すべきポイントが異なるために作られた錯綜句で、異なる文型をそれぞれの句で使うことで、強調すべきポイントを際立たせている。例(23)は、本来は前段と後段を同じ文型にしても良いところである。しかし、後段を“白人有了土地”とは言わず、“土地都落到白人手里了”と改めることにより、白人の侵略者の陰険で狡猾な本質を際立たせ、“土地”を強調することで、アフリカの人々の災難の根源の所在を明確にしている。例(24)は語気の転換により修辞効果を強めている。前半の二つの句は排比の陳述句であるが、後半は語気が一変し、反語文を使うことで、読者の思索と関心を促している。こうすることで、単純に排比句を三つ並べて陳述するより、文が生き生きとし、説得力が生まれる。
錯綜は文の構造の上では整句の中に散句が入り混じり、同質の文に変化を持たせ、文が単調平板になるのを回避し、ことばに変化を持たせ、文章の起伏を増加させる効果がある。
【出典】胡裕樹主編《現代漢語》重訂版・上海教育出版社 1995年
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