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映画『東京家族』について

  ♪ ラップ ♪ (2)

2013年11月06日 | 映画『東京家族』



  


 


  『小学館版 日本の歴史 7』







 







 “親鸞は『教行信証』で「海」という言葉をよく使う。”  『日本の霊性』 梅原猛 (佼成出版社)


                                                          (→「あけくれ」 『2013.11.3 東京新聞』)







                       














  『教行信証』  「顕浄土真実教行証文類序」


 竊かにおもんみれば、難思(なんじ)の弘誓(ぐぜい)は難度海(かい)を度する大船(たいせん)、無碍(むげ)の光明は無明(むみやう)の闇(あん)を破(は)する恵日(ゑにち)なり。

 ひそかに考えてみると、わたしたちには思いはかることも及ばない阿弥陀仏の広大な誓いは、渡ることのむつかしい迷いのを渡らせてくださる大きな船であり、なにものにもさえぎられない光は、真理に暗い愚かさの闇を破ってくださる智慧の陽光である。


しかれば則ち、浄邦縁熟して調達(でうだち)・闍世(じやせ)をして、逆害を興ぜしむ。浄業機彰(あら)はれて、釈迦、韋提(ゐだい)をして安養を選ばしめたまへり。

だからここに、浄土の教えをあらわす機が熟して、提婆達多(だいばだつた)や阿闍世(あじやせ)太子による父王の殺害という事態を起こさせ、また浄土に生まれるための念仏とその念仏の人とをあらわすために、ここに釈迦仏は王妃韋提希(いだいけ)夫人に安養の浄土を選ばせられたのである。


(以下、読み下し文、略)


これこそは、世の人を導くために仮に姿を現された方々が、ともに等しく、苦しみ悩む人々を救おうとされる姿であり、釈迦仏の慈悲が五逆の罪と仏の教えを誹謗する罪を犯す人たちや、仏になる因(たね)をもたない人たちに恵みを与えようとお考えになったものである。

 だからこそ、ここにはっきり、完全でなに一つ欠けるところなく融けこんでいる、もっとも優れた徳を具えた仏のお名前が、悪を転じて徳に変える正しい智慧であり、信ずることのむつかしい、金剛石のようにくだけない信心が、疑いを除いて、さとりをえさせる真実の理法であるとわかったのである。

 このようなものである以上、世間一般の人には行ないやすいまことの教えであり、愚鈍なものには行きやすい近道である。釈迦仏が生涯にわたって説かれた教えは、こののような功徳に勝るものではない。この汚れた世を捨てて浄土を願いながら、そのための行に迷い、信に惑って、心も暗く、さとるところも少なく、悪は重く、障りの多い人は、とくに釈迦如来のお勧めを仰いで、かならずもっとも優れた、さとりの捷径(しょうけい)に身をまかせ、ただこの行だけを奉じ、ただこの信だけをあがめなさい。

 ああ、広大な誓いの強いお力には、いくど生を重ねても遇わせていただくことは困難であり、真実の清らかな信心は永遠の時をかけても、うることはむつかしい。さいわいにして、この行と信とがえられたなら、遠く過去からの因縁によるものと、よろこびなさい。もしまた、このたび、疑いの網にまといおおわれて、信心をうることができなかったら、また元のように永劫に迷いつづけていくことだろう。

 本当に、これこそ、救い取ってお捨てにならない真実のお言葉であり、世に超えてたぐいのない正しいみ教えである。よく聞き、思いをひそめて、あれこれと疑ってはならない。

 ここに愚かにも罪深い愚禿釈の親鸞は、うれしいことに、インド・西域(さいいき)の聖典や、中国・日本の祖師たちの解釈の言葉に、とても遇えそうもないところをいまお遇いすることができ、とても聞けそうもないところをすでにお聞きすることができた。そして真実の心(真宗)である、教えと行とさとりについて、その教えを心から敬い信じて、とくにはっきり如来のお恵みの深いことを知った。だからこうして、耳にしたところをよろこび、えたところを讃えるのである。

                                  

                                                              『教行信証 序』




                       (参考文献) 『日本思想大系 親鸞』,『教行信証(文庫)』 (岩波書店)、 『親鸞』石田瑞磨〔いしだ みずまろ〕 (中央公論社)










 たしかに、「序」においても二箇所「海」があるし、本巻でも多くの海のイメージ,姿が現れるようである。

 そこで例によって、「海」の言葉に注目し、これから『教行信証』を読んでいく、かもしれない(笑)。
 









  『2013.11.2 東京新聞』 山口晃 画






























 夏山の東山あり京に来し  『虚子五句集』(岩波文庫)

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