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【最凶のがん「すい臓がん」の5年生存率が通常の倍以上!】富山大学「膵臓・胆道センター」の治療がすごい
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12/23(金) 6:03配信2022
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とびぬけて生存率が低いすい臓がん。この強敵に立ち向かうためには、最高の技術と心から信頼できる相棒が必要だ。いま北陸の病院で2人の名医が中心になって、「奇跡の快進撃」が起きている。
「最も悪いがん」への挑戦
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「がんは過去の病になりつつある」
ロボット手術の進歩や、免疫療法の登場などで、がんの治療は大きく進歩しており、そのような期待が高まっている。
たしかに、早期発見できたがんの生存率はかなり高い。胃がんや大腸がんの場合、ステージ1の5年生存率は90%を超えており、もはや死に直結する病とはいえなくなってきた。
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だが、いまだ恐れられる種類のがんもある。その代表が、すい臓がんだ。 九重親方、十代目・坂東三津五郎、星野仙一、スティーブ・ジョブズなど、すい臓がんに倒れた有名人は多い。日本テレビのアナウンサー、菅谷大介氏(51歳)は今年8月、自身がすい臓がんの手術を受けたことを公表し、闘病中である。
すい臓がん患者の5年生存率は男性で8・9%、女性は8・1%と、とりわけ低い。
だが、その難しいがんに立ち向かい、しかも目覚ましい成績を収めている病院がある。富山大学附属病院だ。
東京や大阪などのがん専門病院でもない、地方都市の大学病院がなぜ、すい臓がん治療で群を抜く成果を上げているのだろうか?
困難を極める治療
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北陸新幹線「はくたか」に乗り、東京駅から約2時間半で富山駅に着く。そこからバスで約30分、北アルプスを一望できるなだらかな丘に富山大学附属病院はある。
風光明媚な土地ではあるが、病棟の外壁は昭和54年の竣工当時のままで古めかしく、ここで日本トップクラスの治療が行われているとはにわかに信じがたい。
同病院の膵臓・胆道センター副センター長で内科部門責任教授の安田一朗氏が、すい臓がん治療の難しさを解説する。
「すい臓がんは、予後が最も悪いがんです。その理由のひとつは、早期発見の難しさにあります。早期の段階では症状がありませんし、他の種類のがん検診で行われる血液検査でもなかなか見つけにくい。しかもすい臓は胃の後ろ、腸管に囲まれたところにあるので、超音波検査をしても簡単には見つけられません。治療の面においても、他のがんに比べて、有効な抗がん剤の種類が極めて少なく、効果もいまひとつです」
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同病院の膵臓・胆道センター長で外科部門の責任教授でもある藤井努氏が、手術の難しさを語る。
「すい臓の周りには腹部大動脈や上腸間膜動脈、腹腔動脈など重要な血管がたくさん広がっています。すい臓がんはその血管に浸潤しているケースが多く、胃や大腸のように臓器を切り取ってしまえばそれでおしまい、というように簡単にはいかないのです。
手術の途中で血管の扱いを間違えてしまったり、すい液が漏れて合併症が生じたり、がんを取り切れずに一部残ってしまい、再発したりということが非常に起こりやすい難しいがんです」
信頼できる相棒がほしい
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実は富山大学附属病院が、すい臓がん治療で目覚ましい成果を上げるようになったのは、つい最近のことだ。
きっかけは、藤井氏が'17年に名古屋大学から富山大学に移籍したこと。藤井氏は名古屋時代から有名なすい臓がん手術のエキスパートだったが、当時、富山をはじめ北陸にはすい臓がんの専門家はいなかった。
「手術、検査ともにすい臓の分野は非常に特殊です。消化器専門だからといって、誰でも手術や検査をできるわけではありません。
そして外科医が良い手術をするには、きちんと検査をして正確な診断をしてくれる内科の先生、いうなれば信頼できる『相棒』が絶対に必要になります」(藤井氏) だが、藤井氏の着任当初は、そのような内科の医師は富山にいなかった。頼れる相棒がほしいと思っていたところ、ちょうど消化器内科の教授選があり、藤井氏は帝京大学医学部附属溝口病院にいた安田氏に声をかけた。安田氏が語る。
「当時、私の周りにも、自分が信頼して患者の命を預けられる外科の先生がいませんでした。せっかく早期のすい臓がんを見つけることができても、自分の病院ではなく他のがん専門病院などで手術してもらうことが多かったのです。そうすると、実際にがんがどのような状況だったのか、手術はうまくいったのか、予後はどうだったかという情報がなかなか共有できません。ですから、藤井先生からお話があったときは、とても嬉しかったです」
そして翌'18年、安田氏が富山大学に移籍した。
「最凶のがん」から患者を救いたい。そのためには最高の相棒が必要だが、なかなか見つからない。歯がゆい思いをしていた外科と内科の名医が富山大学という場所で奇跡的に合流できたのだ。
「全国的に見ても、内科のレベルは高いが外科がいまひとつだったり、その逆で手術はできるけれども内科の診断が甘かったりする病院が多く、両輪が揃っているところは数えるほどしかないのです」(安田氏
医療機関には医療法による規制があり、宣伝することは難しい。とはいえ、富山大学はすい臓・胆道の専門治療ができるということをアピールする必要があった。
「そのために、安田先生が着任したタイミングで膵臓・胆道センターを開設したのです。それまでも肝胆膵センターという組織は全国のいろいろな病院にありましたが、肝臓とすい臓・胆道の治療は大きく違う。より専門性をはっきりさせるために、日本で初めて膵臓・胆道センターという名前にしました」(藤井氏) さらに'22年、すい臓病理を専門とする平林健一氏も病理学教室の教授として着任し、盤石の組織が完成した。
「週刊現代」2022年12月24日号より
後編『【外科と内科の超連携】富山大学「膵臓・胆道センター」の「驚異のすい臓がん治療」はなぜ実現したのか? 』では、5年生存率が実にこれまでの平均の倍以上となり、3年で970名以上の診察希望患者が並んだという同センターの診察、治療体制とその脅威の実績、新たな医師への教育や技術の継承の体制などについて詳報する。