和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

【SS】ハロー、ハロー、ハロー。

2011-04-14 12:00:56 | 小説。
第一種接近遭遇――目撃。
こんな娘がいるなんて、僕は知らなかった。
長い黒髪。
大きな瞳。
白い肌。
中学校への通学路を歩く姿は、まるで知らない星の人のよう。
夢じゃないのに。現実なのに。日常なのに。
彼女はその日転校してきたのだと、後になって僕は知る。

第二種接近遭遇――影響。
心臓は高鳴り、とてもじゃないが落ち着いていられない。
気がつけば彼女のことばかり考えている気がする。
今何をしているんだろう、とか。
趣味は何なのだろう、とか。
得意な科目は何なのだろう、とか。
生活の節目節目に、全て彼女が割り込んでくる。
地に足がつかないとはよく言ったものだと思った。
僕は何も知らない。
だから知りたい。
こんな気持を、多分「好き」って言うんだろう。

第三種接近遭遇――接触。
それはある日突然。
初めまして、と彼女は言った。
そして、日本では――少なくとも僕の周りでは珍しく、握手を求めてきた。
まさか、こんなことが。
彼女が僕と同じ部活に入ってくるなんてことが、あるなんて。
僕は、初めまして、と返してぎこちなくその手を握る。
柔らかくて、少しひんやりしていた。
彼女は照れる風でもなく、ただにっこりと微笑んでいた。
話を聞けば、どうも帰国子女らしく。
佇まいや風習が違ったりするのも頷けた。
そして僕は、ますます彼女のことが分からなくなって。
だって、文化も何も、全く違うのだから。
だから。
僕はますます彼女のことが知りたくなって。
ますます――彼女のことが好きになっていった。

僕は彼女に、呼びかける。
もっと君のことを教えてください、と。
もっと僕のことを知ってください、と。
僕は今日も、はるか彼方の彼女に、呼びかける。
ハロー、ハロー、ハロー。
コメント
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