和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

あとがき。

2011-04-27 21:15:48 | いつもの日記。
クトゥルー的なホラーがやりたい! っていう思いが丸見えな「冒涜者の宴」でした。
良いんだよ、習作なんだし、別にパクッてるわけじゃないんだし!

取り敢えず、クトゥルー神話の真骨頂たる(?)固有名詞は避けました。
クトゥルーとかアザトースとかネクロノミコンとか、使ってはみたかったんですけどね。
まだそこまで深く理解してるわけじゃないってことで。

何だか分からんものが、何だか分からんうちに、自分たちの身に迫ってくる。
という「何だか分からんホラー」がポイントかな、と思い、書いてみました。
クトゥルー系は海が舞台になることが多いんですが、ちょっと馴染みがないので山で。
日本人が海を舞台にしたホラーを書いたら、それは船幽霊とかソッチ系になるからな!
あと、名前をイニシャルにしたのはギリギリで国籍を隠すためです。
一応、設定的には日本人じゃない感じ。でも日本人でもいいや。みたいな。
昭和初期くらいの文学作品でたまにあるよね、イニシャルトーク。
イニシャルトーク言うな。
何にせよ、日本人にはいろいろ難しい。

それから、翻訳小説風な語り口も難しい。
っていうか無理だろうそれは。
翻訳小説は基本的に苦手だからなー。
なので、ただの読みにくい文章になっただけのような気もします。
意味ねぇなぁ。

まぁ、とにかく一作書いてみたかったんですよ。
それだけです。
書いてみたらちょっと落ち着きました。
よし。
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冒涜者の宴

2011-04-27 21:04:30 | 小説。
 友人のKは新聞記者である。
 久方ぶりに会うKはめっきりやつれており、日々の苦労の一端を窺い知ることができた。だがしかし、同時に瞳はぎらついていて、若い頃のままだ。何かを追い続ける彼の姿勢には感服せざるをえない。
 Kは再会の挨拶もそこそこに、本題に入った。
「さて、今日はわざわざこんな遠くまで来てもらってすまないね。実は君に見せたいものがあるのだ」
「見せたいもの? 何かスクープでも捕まえたのかい?」
「ああ、とびきりのものだ」
 彼は昔から何かにつけて私に自慢する癖があった。誰と誰が付き合い始めただの、心霊写真を撮っただの、大半は下らないことだったのだが、情けないことに聞いている私も少し楽しんでいたのも事実だ。
「最近起こっている連続誘拐事件のことは知っているね?」
「それはもちろん、知っているとも。今週に入って既に3人だったか。犯人はまだ捕まっていないらしいね。実に恐ろしいことだ」
「そう、それだ。その被害者たちを、見つけたのだ」
「何だって!?」
 私は思わず大声を出してしまった。それが本当だとすれば、とんでもないことだ。
「警察に通報する前に、君にも見せてやろうと思ってね」
「そんな、何を言うのだ君は! 一刻も早く警察へ届けるべきだろう」
「僕のような二流記者が言う事など、証拠がなければ鼻で笑われるだけさ」
 そう言って、Kは自虐的に笑った。しかし私は簡単にはその真偽が分からず、彼に問いかけた。
「それは、本当なのか?」
「間違いないね。あれは誘拐された被害者だった」
 自信たっぷりに断言した。それほどまでに言うのなら、私がこの目で確かめてやろうじゃないか――馬鹿馬鹿しくも私はそのように考えたのだった。

 そこは都会から随分離れた田舎の、それも深い山奥だった。よほどのことがなければこんなところまで足を運ぶ者はおるまい。
「だからこそ、誘拐犯が潜むにはもってこいなのさ」
 Kは不敵に笑ってそう言う。それは確かに一理あるかもしれないなと納得してしまった。
 車から外を見回すが、本当に何もない。いや、山奥なのだから当然ではあるのだが。日も暮れて、辺りはより不吉な雰囲気に包まれてきた。
 道は舗装されてもおらず、獣道だ。やがてそれすらなくなり、進めなくなったところで我々は車を降りた。完全に山歩きの様相を呈してきたが、私はスーツ姿である。
「なに、ここまで来ればもうすぐだ」
 その普段は気にもとめない軽薄とも取れる態度が、何故だか妙に引っかかった。
 そこからKは懐中電灯を片手に私を誘導した。5分ほど歩いただろうか、我々の目の前に、切り立つ崖とそこにぽっかりと口を開けた洞窟が姿を現した。
「さあ、ここだ。ここからは犯人に見つからないよう、慎重に進むぞ」
 私は黙って頷いた。
 洞窟内にあかりはなく、Kの懐中電灯だけが頼りだ。その細い光の筋が照らし出す岸壁は黄土色で、ところどころキラキラと反射して見える。空気はじめじめとしており、足元もどうやら湿っているらしかった。水脈が近いのだろうか。歩くたびに革靴の音が無粋に響き、これで犯人に気取られるのではないかと心配で仕方がない。
 洞窟といえば自然のものを想起するが、この洞窟はやや人の手が入っているようだった。さすがに手すりなどはないものの、躓きそうな凹凸も少ないし天井もそれほど低くない。かといって、完全に文明の利器を受け入れたかのような直線はなかった。恐らく、数人かせいぜい数十人が出入りする中で少しずつ掘るなり埋めるなりしたのだろう。
 幾度か分かれ道があったが、Kは迷わず進んでいく。帰り道など覚える余裕もなかった。
 そうこうしていると、Kが不意に私の手を引き壁に身を寄せた。
「すぐそこにいるぞ」
 耳打ちするように小さく言う。ついに――我々はその場所に到着したのだった。
 道はひらけ、大きな空洞になっている。ちょうどホールのような感じだ。等間隔に篝火が置かれ、広間は薄ぼんやりと明るくなっているようだった。
「ここからでは詳しいことは分からないな。見つからないように移動しよう」
 Kに導かれるまま、中腰の姿勢で移動する。ホールのようになっているとはいえ、その広間も半自然の場所だ。隠れる事ができるような岩や柱はいくらでもある。そして、そんな物陰のひとつからわずかに顔を出し覗いた先は――実におぞましいものであった。
「あれは――何だ!?」
 私は目を見開き、驚愕した。そこで繰り広げられているのは、宴だ。それも野蛮で退廃的で冒涜的な、世にも忌まわしい宴だ。
 見渡すかぎり、その場にいたのは20人程度だろうか。ただし、約半数は物言わぬ死体である。明らかに息をしていないと分かる。ある者は腹を割かれて内蔵を引き摺り出され、ある者は頭を割られている。そして生きた者どもは、残らず全裸でその血を浴びながら屍肉を喰らっているではないか!
 その冒涜者たちは思い思いに死体を辱め、嬲り、愚弄しながら、皆それぞれに薄く笑みを浮かべているのだった。
「おい、何なんだ、これは」
 吐き気を催す光景を目の当たりにしながら、私はKの肩を揺さぶる。しかし、彼は、
「何って、これが誘拐の真相さ」
 と何事もないかのように言ってのけた。更に、彼は詳しく語り出す――。

「ここで行われているのは神降ろしの儀式だ。誘拐されたと世間で報道されている人々は、皆生贄になっている。ほうら、あそこにもたくさんいるだろう? その血を、肉を捧げることで神を喚ぶ儀式なのだ。
「そして儀式を行う側は、世間では誘拐犯と罵られているが、誇り高き魔女の血を引き継ぐ由緒正しき聖職者たちだ。彼らは歴史によって貶められ、神性を奪われた、はるか昔の神を今の世に蘇らせようとしているのだ!
「その神は名を×××××という。ああ、気にしないでくれ、この名は普通の人間には発音もできなければ聞き取ることもできないからな。
「×××××ははるか昔この地上を支配した大いなる存在にして万能の存在だ。だが、人間が地上に跋扈し、その数と邪な心で長い時をかけて封じてしまった。つまり、神を貶め、邪神と呼んだのだ。
「もちろん×××××は人間などという存在に劣るものではない。だが、時期も悪く、何より人間のタチの悪さときたらなかった。殺そうが呪おうが洗脳しようが、奴らはどこからでも湧いてくる。実に汚らわしい虫だと思わんかね? そうして不本意ながら×××××はおとなしくその身を封じられるより他なかった。
「だが、滅んではいない。深い深い地の底で眠りながら、この地を取り返す算段を立てている。そして、あそこで儀式を行なっている者たちは、その復活の手助けをしているのだ!」

 それは、まともな神経をしていれば耐えられる話ではなかった。
 ああ、狂っている。皆――Kも含めて、皆狂っているのだ!
 私は吐き気で酸っぱくなった口を押さえながら、一目散に走った。これ以上この場にいてはいけないと察知した。
 儀式。魔女。そして邪神の復活――。
 ここで繰り広げられている宴は、そして一連の誘拐事件は、全てそのためのことだったというのか。にわかには信じられないことだが、事実、この目で血をすすり肉を喰らう様を見てしまっている。邪神だ何だというのがまやかしであれ、正常な人間の行うことではないのだ。
 私はただひたすら走った。光もない中、懸命に。だが、当然入り組んだ洞窟内を把握できるわけもなく、小さな段差に躓き、壁にぶちあたった。手探りで進路を探すが、しかし、どうもこの道は袋小路だったらしい。
 何ということだろう。
 暗闇の中、袋小路に追い詰められ、もはやどうすることもできない。絶望に打ちひしがれる中、ゆっくりと靴音が聞こえてくる。そして、眩しく私を照らす懐中電灯の光。
「さあ、見つけた。なに、逃げることはないよ。君も我々の儀式に加わるのだ。その血と、肉をもって――」
 邪神の手先たるKの気違いじみた笑みに、私は正気を保っていられなくなった。
コメント (3)
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