和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

自画自賛。

2012-05-14 22:46:53 | いつもの日記。
「ラストバトル」、読み返すと何か面白いねこれ。
いや、僕が自分の作品を面白いと言うのはいつものことなんですけども。
今回、これを書いた経緯とか設計とか、そういう裏の部分が殆ど思い出せません。
何かね、意識朦朧としたまま書き上げちゃって。
そんなのが面白いってんだから、自分としては実に複雑。

しかし、気に入りました。わたし、気に入りました。
これ、アレだよね。どうかすると、シリーズものにできるくらいのポテンシャルあるよね。
第一話のサブタイトルが「ラストバトル」っていう。
それだけでちょっと面白そうじゃないですか。
ダメですかね。

このあと、魔王が強くなったりより強い敵が出てきたりしてインフレバトルしていくの。
楽しそう。
でも名前はイサムとマナブ。
その辺の脱力具合が実に和泉的。

ま、本当にシリーズ物として書くかどうかは、体力的な問題もあるので未定ですが。
取り敢えず、まずこの1本を加筆修正してみたいと思います。
できれば明日にでもやりたいな。
自画自賛してるとはいえ、色々気になる部分はあるからね。
その辺はさすが、混濁した意識で書いただけあります。
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【SS】ラストバトル

2012-05-14 16:14:06 | 小説。
「やあやあ、ようこそ、ようこそだ!」
数多の本に埋もれるようにして、ひとりの青年が嬉しそうに笑う。
「君を心から歓迎するよ! 勇者・・・ええと、名前は何だったかな?」
勇者と呼ばれたもうひとりの青年は、無表情のまま、つまらなそうに答えた。
「名前など、ないよ。もう捨てた。それより――貴様が魔王か?」
「いかにも」
笑ったまま、青年は恭しく一礼をする。

魔王の城の最深部。
そこで、勇者と魔王は、初めて出会った。

「それにしても、名前がないと不便だね。よし、じゃあ君のことはイサムと呼ぼう」
「・・・・・・?」
「僕の故郷の言葉で、勇者とは『勇ましき者』と書くのさ。
 こういう字を――ああ、漢字がない世界というのは何だか不便だな。
 まあ、異界の言葉で『イサム』と言うのだと思ってくれればいい。
 僕のことは、魔王ではなく、んー・・・マナブ、と呼んでくれ」
魔王――マナブは、勇者――イサムにはよく分からないことを並べ立てた。

イサムは、強い違和感を覚える。
魔王は、異形の者「魔物」たちの王である。
なのに目の前のこの男――ただの人間にしか見えないではないか。
それに、よく喋る。
よく喋るということは、意思疎通が可能ということだ。
魔物は総じて言葉を解さない。
故に、争うしか道はなかったのだ。
イサムはこれまで、そうした魔物たちと戦ってきた。
そしてその最後の一体が、魔王なのだと思っていた。
つまり、魔王とは魔物の延長線上に在るものだと思っていたのに。

「お前、人間・・・か?」
「『お前』じゃないよ、マナブだよ」

マナブはへらへらと笑う。
これから斬り合い、殺し合うのだというのに、まるで緊張感がない。
「確かに僕は人間だね。ただし、この世界の人間じゃない。だから『魔王』で構わない」
「・・・魔界、というやつか?」
「僕からしたらコッチこそ魔界なんだけど・・・そうだね、君ら的には、魔界だね」
「人間が何故、人間を襲う?」
イサムは無表情を崩さず、問いを重ねる。
「嬉しいな、僕に興味を持ってくれたね?」
対照的に、マナブは笑顔を崩さない。

「それじゃあイサム、話をしよう。君たちが住むこの世界の話だ」
マナブは手近にある古びた本を一冊手に取った。
それをパラパラと捲りながら、語り始める。

「この世界には、大気中に魔素と呼ばれる物質がある。君もよく知る魔法の源だ」
「何を、当たり前のことを」
「そう、当たり前だね。酸素があるのと同じくらい当たり前に魔素がある。
 そして人々はその魔素を利用して生活している」
「それが、どうした?」
「僕の故郷――君らが言うところの魔界にはね、魔素がないんだ」
「何をバカなことを」

魔素は魔法の源であり、魔物の構成物質だ。
そして魔王は、魔物の長である。
その魔王が住む魔界に、魔素がない?
イサムはマナブが何を言っているのかさっぱり分からなかった。

「不思議だよねえ。魔素。何だこれ。
 ありとあらゆる物理法則を無視して、エネルギー法則を無視して作用する。
 そしてこの世界の住人はそれを当たり前として受け止めている。
 だから機械科学は殆ど発達しないし、代わりに魔法学なんていうものが存在する。
 信じられないよ。実に――オモシロイ」

ぱたん、と本を閉じて、マナブは言う。
「オモシロイから、その魔素とやらを使って生物兵器を作ってみた――それが魔物」
「面白いから・・・だと?」
「うん。オモシロイってことは、他の何よりも優先するよね。
 で、折角こうして謎の物質が溢れる異界に来られたんだ。じゃあやっちゃおうって。
 思う存分、色んな事を試してみたわけさ」
「それでどれくらいの被害が出るのか・・・分かっているのか?」
「そうだね、国ひとつ滅ぶくらいは覚悟してたかなー。
 だからこうしてイサムが目の前に立っているという事実に、僕は驚いているんだ。
 いやぁ、人間の可能性って本当に凄いよね」
「・・・お前は、狂ってるよ」
「うん、よく言われる。最初はこれでも褒められてたんだけどね?
 最初に興味を持ったのが薬物でさー。とある難病の特効薬を作ったんだけど。
 そこで稼いだお金で、新種のウイルスを作ってばら撒いてみたんだよね。
 そしたら、色んな人から超怒られてさー。
 いやぁ、薬を作ったんだから次は毒だ! って普通思うじゃない。
 何で分っからないかなー?」
「なるほど」
頷くイサム。
そして、そこでようやく、イサムは剣を抜いた。

「――お前は、人間じゃないよ」

「・・・ふふ、そうだね、そうかも知れないね」

ぐにゃりとマナブの右手が歪み、剣を形作る。
「じゃ、名残惜しいけど――この辺でラストバトルいっとく?」
「ふん」

何百何千もの屍を越えて。
勇者が、魔物の王に斬りかかる。
もはや二人の間に憎しみはなく。
ただただ、事務的に、作業的に、最後の戦いが始まった。
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