「巫女様」
――誰かが私をそう呼んだ。
神の声を聞く者。
神の力を借りる者。
まるで、この力が私のものではないかのように。
例年通り、国は飢えていた。
日照り続きで作物が育たないとか、何とか。詳しいことは知らない。
そして例年通り、最終的には私に頼る。
否、私を通して、神と呼ぶ何者かに頼るのだ。
「神よ。何卒、雨を降らせて下さいまし――」
日に二度三度と、同じ願いを違う人から聞かされる。
私は何だか、飽きてきた。
同じような願いを聞くことに。
そして――神の代理と扱われることに。
「・・・煩いなぁ」
誰もいなくなった祭壇で、ひとりごちる。
国中の誰も、私が、私の力で願いを叶えていることを知らない。
幼い頃からそうだった。
どんな奇跡を起こしても、それは神の力とされ、私のものではないとされた。
それでもいいか、と思ってはいたのだけれど。
積もりに積もった不愉快は、私の中の何かを決壊させた。
私が願いを聞かなくなったら。
みんな、どう思うだろう?
いや。
私に願いが届かなくなったら。
そうしたら、神などいないことに、気が付くだろうか。
そうだ。
壁を作ってしまおう。
私と、みんなの間に、高い高い壁を作ってしまおう。
誰も乗り越えられないような。
完全なる拒絶を、築きあげてしまおう。
思い付いてしまえば、実行は容易かった。
言語を変える。
私が操る言語と、みんなが操る言語を変える。
ただそれだけで、容易に壁はできる。
「――XXXXXX」
必死の形相で、何事か訴えかける人々。
「ああ、何を言ってるのかわからないわ。困ったわね」
悲しそうな演技をしながら、そんなことを言ってみせる。
勿論、私のこの言葉も、彼らには何一つ通じない。
さあ。
どうする?
神の代理でなくなったら、私をどう扱う?
迫害するならすればいい。
私は精一杯抵抗しよう。
たとえ刃を向けられようと、負けない自信はある。
それだけの力を、私は持っている。
やがて、どうしても言葉が通じないと分かった人々は、静かに去って行った。
そしてそのまま、私の周りには誰もいなくなった。
恵みの雨など降らない。
私が降らせはしない。
いつか――。
この高い壁を乗り越えて、神などではない本当の私を見つけることができたなら。
その時に、じっくり話をしようじゃない。
――誰かが私をそう呼んだ。
神の声を聞く者。
神の力を借りる者。
まるで、この力が私のものではないかのように。
例年通り、国は飢えていた。
日照り続きで作物が育たないとか、何とか。詳しいことは知らない。
そして例年通り、最終的には私に頼る。
否、私を通して、神と呼ぶ何者かに頼るのだ。
「神よ。何卒、雨を降らせて下さいまし――」
日に二度三度と、同じ願いを違う人から聞かされる。
私は何だか、飽きてきた。
同じような願いを聞くことに。
そして――神の代理と扱われることに。
「・・・煩いなぁ」
誰もいなくなった祭壇で、ひとりごちる。
国中の誰も、私が、私の力で願いを叶えていることを知らない。
幼い頃からそうだった。
どんな奇跡を起こしても、それは神の力とされ、私のものではないとされた。
それでもいいか、と思ってはいたのだけれど。
積もりに積もった不愉快は、私の中の何かを決壊させた。
私が願いを聞かなくなったら。
みんな、どう思うだろう?
いや。
私に願いが届かなくなったら。
そうしたら、神などいないことに、気が付くだろうか。
そうだ。
壁を作ってしまおう。
私と、みんなの間に、高い高い壁を作ってしまおう。
誰も乗り越えられないような。
完全なる拒絶を、築きあげてしまおう。
思い付いてしまえば、実行は容易かった。
言語を変える。
私が操る言語と、みんなが操る言語を変える。
ただそれだけで、容易に壁はできる。
「――XXXXXX」
必死の形相で、何事か訴えかける人々。
「ああ、何を言ってるのかわからないわ。困ったわね」
悲しそうな演技をしながら、そんなことを言ってみせる。
勿論、私のこの言葉も、彼らには何一つ通じない。
さあ。
どうする?
神の代理でなくなったら、私をどう扱う?
迫害するならすればいい。
私は精一杯抵抗しよう。
たとえ刃を向けられようと、負けない自信はある。
それだけの力を、私は持っている。
やがて、どうしても言葉が通じないと分かった人々は、静かに去って行った。
そしてそのまま、私の周りには誰もいなくなった。
恵みの雨など降らない。
私が降らせはしない。
いつか――。
この高い壁を乗り越えて、神などではない本当の私を見つけることができたなら。
その時に、じっくり話をしようじゃない。