和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

【SS】8月15日

2012-08-03 16:28:17 | 小説。
木造の旧校舎の屋上が、約束の場所だった。
暑い日差しの中、純白のワンピースに麦わら帽子の少女が微笑む。
「やあ。今年も、来たよ」
僕はつられて小さく笑い、頷いた。

今日は、8月15日。
毎年、一日だけ、おばあちゃんが帰ってくる日だった。

「お父さんとお母さんは元気かい?」
「うん、元気だよ」
「そうか、それはよかった。二人共、まだこっちに来るには早いからね」
「おじいちゃんも、元気だよ」
「・・・あの人はそろそろこっちに来てもいいような気もするよ」
おばあちゃんは嬉しそうに、少し寂しそうに、そう言った。

お父さんとお母さんが度々喧嘩をしていること。
お兄ちゃんが高校受験でピリピリしていること。
飼っている猫がどこかへ行ってしまったこと。
どうでもいい、だけど大事な話をする。
おばあちゃんは、そのひとつひとつを優しく笑って聞いている。

「それと」
「うん、どうした?」
僕は、どうしても言わなきゃいけないことを、口にする。
「僕、今年で小学校卒業なんだ」
「おお、そうだったね。もう6年生だったか」
「うん。だから、来年からは――もうここに来れなくなっちゃうんだ」
旧校舎は、勿論小学校の中にある。
中学生になったら・・・多分、入ってこれない。
「そうか・・・あんたももう中学生なんだね。早いもんだ」
言って、くしゃくしゃっと僕の頭を撫でる。
「なら、いつまでもこうやってばあちゃんと会ってちゃいけないねぇ」
「そんな――」
「中学生になって。高校生になって。もうあっという間に大人だ」
そしたら、ばあちゃんのこともきっと忘れるよ。
そんな、悲しいことを言う。
「僕は・・・忘れないよ」
「いいのさ、忘れて。ばあちゃんは死んだ人間だ。生きてるあんたたちは――
 そんなこと忘れて、しっかり自分の人生を生きなさい」
「ばあちゃん・・・」
少しの沈黙。
そうしてる間に、時間は簡単に過ぎていく。
ああ、とおばあちゃんは思い出したように声をあげた。
「もう時間だね」
「・・・そっか」
毎年のことながら、あっという間だ。
そして、多分、今年で最後だ。
僕は急激に悲しくなる。
そんな僕を見透かしたように――

「いい大人になるんだよ」

おばあちゃんは、そう言って。
ふっと、初めからいなかったかのように、掻き消えてしまった。

少し涙が浮かんだ両目を擦って、僕は屋上を後にする。
「大人になったって、忘れないよ」
そんなことを呟いて。
コメント (2)
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ドラクエ10。

2012-08-03 12:34:34 | いつもの日記。
ついに出ましたね、ドラクエ10。
やる気はさらさらないんだけど!

そもそもね、今更Wii買わないよっていう。
何でそんな旧世代機的なものを買いますか。
しかも、USBメモリだのキーボードだのコントローラだの周辺機器が要るわけでしょ?
無理だわー・・・。
せめて3DSで出て欲しかった。
通信機能も文句ないだろうし、周辺機器も要らないだろうし。

しかし、ついにドラクエ卒業かー・・・。
FFも14はやってないけど。
何かこう、切ないものがありますね。
死ぬまでやってるものだと思ったんだけど、まさかこういう形でやらなくなるとは。

オンラインのハードルってのも、まぁ少しはあるのかな。
今更オンラインゲームやるのもねー・・・。
コミュニケーションが取れない、取るのが面倒くさい人間としては辛い。
会話なしの、ゆるいコミュニケーションぐらいがいいです。

本心ではやりたいんです。
できるなら。
ただ、諸々のハードルを超えてまでやろうとは思えない、っていうね。
残念ながら、そんな感じです。
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