和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

あとがき。

2012-08-17 10:35:06 | いつもの日記。
「夏の雨」全三作、完結です。

本作は、おおまかに
「現象」
「動機」
「真相」
という三部作になっています。

1.雨宿り
 雨が降り出しましたよ、そしてそれを操る鬼がいますよ、という話。
 現象を最も小さい単位で切り取っています。
 初対面で馴れ馴れしい人って、それだけでどうにも苦手だよね。

2.melt
 雨が降り始めたそもそもの理由は何? という話。
 何かもう他人ごとには思えませんな!
 病んだ人の話は、相変わらず好きです。

3.ゲームオーバー
 全ての真相、黒幕の話。
 僕が書くファンタジーは、大体こういう感じですね。
 どうでもいいけど、何でこの二人(?)はこうも気怠げなのか。
 暑いからだよ!

そんな感じで、「夏の雨」でした。
ちゃんと考えて書いたのは割と久しぶりな気がする。
一応書ききってないだけで他にもちゃんと考えてる話はあるんだけど。
何にせよ、一応完結までこぎつけたということで、よかったです。
出来の良し悪しは、また別として。
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【連作/夏の雨】3.ゲームオーバー

2012-08-17 10:23:36 | 小説。
「仕方ないなぁ」

ぼそりとひとり、呟いた。
ひとり、のつもりだった。

「何が仕方ないの?」
「ああ、君か」

何もない暗闇の世界に、もうひとり。
彼女はいわば、もうひとりのぼくだった。
ぼくはひとりではなかった。

「――いやね。ちょっと、世界を滅ぼそうかと思って」
「あら。もう飽きたの?」

『もう』。
彼女にとっては、そんな感覚だろう。
まったく、彼女にはかなわない。

「まだたったの――46億年じゃない」
「そうだね、君の137億年には及びもしない」
「そう思うなら、どうして?」
「うん、まぁ、何だろう。可哀想になっちゃって、さ」
「可哀想?」
「そう、可哀想。
 精一杯生きることも叶わず、かといって死ぬこともできず。
 迷惑をかけるのも嫌で頼るのも申し訳なくて縋るのも忍びなくて。
 小さくてか弱くて優しくて、ぞんざいで残酷で無慈悲で。
 ――人間というのは、どうしてこうも可哀想なのかね」
「・・・あなたは、感情移入しすぎなのよ」
「そうかもしれないね」
「でもまぁ、あなたが決めることだから。あたしは何も言わないわ」
「うん。ありがとう」

そうして彼女は、音もなく去っていった。
あれで彼女は結構忙しいのだ。

ぼくは小さく溜息を吐く。
何だか酷いことをしちゃったかな。
自分で作った箱庭に、自分で作ったお人形。
みんなが楽しくなればいいと思って、作ったのだけれど。
世界はあまりに、悲哀で溢れている。

やがてぼくの溜息は、白く濁り。
薄膜のように、星を覆った。
溜息はやがて雨となり、世界に等しく降りしきる。
あとは、雨の管理人をばらまいて、完了。
ほんの数年で、多分世界は滅ぶろう。

作ってしまって、ごめんなさい。
救えなくて、ごめんなさい。
何もしてあげられなくて、ごめんなさい。

世界は、これで終わりです。
さようなら。

悲哀も、これで終わりです。
おめでとう。

ぼくは少し、休みます。
何だか凄く疲れてしまって。
それじゃあバイバイ。

おやすみなさい。
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