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新古今和歌集の部屋

歌論 無名抄 隔海恋事

或所にて哥合し侍し時、海路をへだつる戀と云題に《哥は忘れたり》つくしなる人の戀しきよしをよめりしに、かたへは是を難ず。

更なり、つくしは海をへだてたれば、おもひつヾくるはさる事なれども、かちより行人のためには、もじの關までおほくの野山を過てたヾいさヽか海をわたるべければ、題の本意もなく頗荒涼なるかたもあり。たとへばみちのくなる人を戀るよしをよみては、此哥ひとつにて、野を隔戀にも山をへだつる題にも、もしは里をへだて河をへだつるにも用ゐむとやする。題の哥はさもと聞ゆるこそよけれ。あまりざびろ也。

と難ず。或は、

哥はさのみこそよめ。まさしく海を隔てば必彼のいそなる人を此浦にて見わすべき事かは。あまりの難なり。

争あへりしを、其座に先達あまた侍しもかた/"\わかれて、おほきなる論にてなん侍し。されど、心にくき程の人おほくは、難をばいますこしいはれたりとぞ定侍し。

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