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新古今和歌集の部屋

式子内親王集 正治百首 恋歌

272 導せよ跡なき波に漕ぐ舟の行方も知らぬ八重の潮風 新古今
しるへせよあとなきなみにこくふねのゆくへもしらぬやへのしほかせ
本歌:白浪のあとなき方に行く舟も風ぞたよりのしるべなりける(古今集 恋一 藤原勝臣)

273 斯くとだに岩垣沼の澪標知る人並みに崩る袖かな
かくとたにいはかきぬまのみをつくししるひとなみにくつるそてかな
岩垣浪の→A本・春海本 知る人無しに→C本 くつるころかな→文化九本 朽ちる頃かな→森本

274 夢にても見ゆらむ物を歎きつつうちぬる宵の袖の気色は 新古今
ゆめにてもみゆらむものをなけきつつうちぬるよひのそてのけしきは

275 わが恋は知る人もなしせく床のなみだもらすな黄楊の小まくら 新古今
わかこひはしるひともなしせくとこのなみたもらすなつゆのをまくら
をく床の→神宮本 露のをまくら→A本 黄楊の木枕→文化九本

276 知らせばや菅田の池の花勝美且つ見るままに浪ぞ萎るる
しらせはやすかたのいけのはなかつみかつみるままになみそしをるる
化かへみ→三手本 なにしをるらん→益田本 浪にしほるる→B本

277 吾妹子が玉裳の裾に寄る波の夜とは為しに乾さぬ袖かな 新勅撰
わきもこかたまものすそによるなみのよるとはなしにほさぬそてかな
ふさぬ袖哉→神宮本

278 逢ふことは遠津の浜の岩躑躅言はでや朽ちむ染むる心を
あふことはとほつのはまのいはつつしいはてやくちむそむるこころを
序詞 本歌 万葉集巻第七1188 山越えて遠津の浜の岩つつじ我が来るまでにふふみてあり待て いとつつじ→森本 いはでやはてん→C本・京大本・神宮本 うむる心を→神宮本

279 わが袖は仮にも干めや紅の浅葉の野良に掛かる夕暮 新拾遺
わかそてはかりにもひめやくれなゐのあさはののらにかかるゆふくれ
あさかの野良に→A本・C本・京大本・神宮本・河野本 あさはののべに→春海本 あさかのならに→松平本 かかる夕暮→B本 かかる夕つけ→京大本 かかるいふつゆ→C本 紅の浅葉の野らに刈る草の束の間も我を忘るな(万葉集 巻第十一 よみ人知らず)

280 逢ふことを今日松ヶ枝の手向草幾夜萎るる袖とかは知る 新古今
あふことをけふまつかえのたむけくさいくよしをるるそてとかはしる
逢ふことは B本・三手本・C本・正治二年初度 本歌:白波の浜松が枝のたむけぐさ幾世までにか年の経ぬらむ (万葉集 巻第一 新古今 雑中 川島皇子)


281 待ち出でて如何に眺めむ忘るなと言ひしばかりの有明の月 続後拾遺
まちいてていかになかめむわするなといひしはかりのありあけのつき
待ち出でても→A本・C本・森本・国会本・河野本・B本・神宮本・正治二年初度 有明の空→益田本・C本・京大本 本歌:今来むといひしあかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな(古今集 恋四 素性)

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