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りしかば、つゐに跡とむることを得ずして
三十餘にして更に我心と一の庵を結ぶ
是を有し住居になずらふるに十分が
一なりたゞ居屋ばかりをかまへて、はか/"\
しくは、屋を作るに及ばず。わづかについぢ
をつけりといへ共門たつるにたづきなし
竹を柱として車やどりとせり。雪ふり
風吹ごとにあやうからずしもあらず。所
は河原ちかければ水の難ふかく、白波
の恐もさはがし。すべてあらぬ世を念じ
過しつゝ、心をなやませることは、三十餘年
りしかば、遂に跡とむる事を得ずして、三十余にして、更に我心と一
の庵を結ぶ。是を有し住居になずらふるに、十分が一なり。ただ居屋
ばかりをかまへて、はかばかしくは、屋を作るに及ばず。わづかに築
地をつけりといへ共、門(もん)建つるにたづきなし。竹を柱として
車やどりとせり。雪ふり、風吹ごとに、危うからずしもあらず。所は
河原ちかければ、水の難深く、白波の恐もさはがし。全てあらぬ世を
念じ過しつゝ、心を悩ませることは、三十余年
(参考)前田家本
りしかば、つひに跡をとどむる事をえず。三十あまりにして、更にわが心と一
の庵をむすぶ。これをありし住まひに並ぶるに、十分が一なり。ただ、居屋
ばかりを構へて、はかばかしくは屋を造るに及ばず。わづかに築
地を付けりといへども、門を建つるたづきなし。竹を柱として
車を宿せり。雪降り、風吹くごとに、危うからずしもあらず。所、
河原近ければ水難も深く、白波の恐れも騒がし。すべてあられぬ世を
念じ暮らしつつ心を悩ませる事、三十余年
(参考) 大福光寺本
リシカトツヰニヤトゝムル事ヲエス。ミソチアマリニシテ更ニカ心ト一
ノ庵ヲムスフ。是ヲアリシスマヒニナラフルニ十分カ一也居屋
ハカリヲカマヘテハカハカシク屋ヲツクルニヲヨハス。ワツカニ築
地ヲツケリトイヘトモカトヲタツルタツキナシ。タケヲハシラトシテ
車ヲヤトセリ。雪フリ風フクコトニアヤウカラスシモアラス。所
カハラチカケレハ水難モフカク白波ノヲソレモサハカシ。スヘテアラレヌヨヲ
ネムシスクシツゝ心ヲナヤマセル事三十余年
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たるかいこのまゆみなみ
ぢかき世のたとへ也。
日野山 鴨のあたりなるべ
し未考
閼伽棚 あかだなは水た
な也。閼伽は水の梵語也。
阿弥陀普賢 不動いづ
れも十三佛のうち也。
十三仏は、不動、釈迦
文殊、普賢、地蔵、弥勒
薬師、觀音、勢至、阿弥陀
阿閦、大白、虚空蔵也。
往生要集 恵心僧都之
作也。
葵祭と牛車
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