新古今和歌集の部屋

時雨亭方丈記 辻風1


ぐひ邉際をしらず。人のいとなみおろかなる中に
さしもあやうき○中の家をつくるとてたからを
ついやし心をなやます事はすぐれてあぢきなく
ぞ侍る。又治承四年卯月十二日の比中御門
京極の邉たり大なる辻風おこりて六条あた
りまでいかめしく吹こと侍りき。三四町をかけてふきま
くる間に其中にこもれる家ども大なるもちいさ
きも一としてやぶれぬはなし。さながらひらに
たふれたるも有。けたはしらばかりのこるも
有。門の上を吹はらいて四五町がほかにをき又かき

(参考)前田家本
類ひ辺際を知らず。人の営み皆愚かなる中に、
さしも危うき世中の家を造るとて、宝を
費やす事は、すぐれてあぢきなく
ぞ侍る。又治承四年卯月の比、中御門
京極のほどより、大きなる辻風起こりて、六条辺り
まで、厳めしく吹く事侍き。三四丁を掛けて吹きあ
ぐる間に、その中に籠もれる家ども、大きなるも小さ
きも一つとして破れざるは無し。さながら平に
倒れたるもあり。桁柱許り残れるも
あり。門の上を吹き払ひて

(参考)大福光寺本
クヒ辺際ヲ不知人ノイトナミ皆ヲロカナルナカニ
サシモアヤウキ京中ノ家ヲツクルトテタカラヲ
ツイヤシコゝロヲナヤマス事ハスクレテアチキナク
ソ侍ル。又治承四年卯月ノコロ中御門
京極ノホトヨリヲホキナルツシ風ヲコリテ六条ワタ
リマテフケル事ハヘリキ。三四町ヲフキマ
クルアヒタニコモレル家トモヲホキヲホキナルモチヰサ
キモヒトツトシテヤフレサルハナシ。サナカラヒラニ
タフレタルモアリ。ケタハシラハカリノコレルモ
アリ。カトヲフキハナチテ四五町カホカニヲキ又カキ
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