京都祇園萩月 鞍馬焼かき餅
花のいろに
あまぎるかすみ
たちまよひ
そらさへにほふ
やま桜かな
落款
おもふこと
なくてぞ見まし
もみぢ葉を
あらしの山の
ふもと
ならずは
落款
もみじ葉の
色にまかせて
ときは木も風にうつろふ
秋の山かな
新古今和歌集巻第二 春歌下
祐子内親王家にて人々花の歌よみ
侍りけるに 權大納言長家
花の色にあまぎるかすみたちまよひ空さへ匂ふ山ざくらかな
よみ:はなのいろにあまぎるかすみたちまよいそらさえにおうやまざくらかな 定隆雅 隠
意味:花の色が一面に曇らせ、霞も立って漂い、空さえ美しく映える山桜だな
備考:永承五年六月五日祐子内親王家歌合後の歌会。参考歌 梅の花それとも見えず久方のあまぎる雪のなべて降れれば(古今集冬歌 よみ人知らず)
巻第五 秋歌下
大井河に罷りて紅葉見侍りけるに
藤原輔尹朝臣
思ふ事なくてぞ見ましもみぢ葉をあらしの山の麓ならずは
よみ:おもうことなくてぞみましもみじばをあらしのやまのふもとならずは 隆 隠
意味:悩みなんか忘れて見るべきだろう、紅葉葉を。嵐が散らす嵐山の麓に住んでいないのなら。
備考:嵐と嵐山の掛詞。類似歌に 思ふ事無くてぞ見まし与謝の海の天橋立都なりせば(千載集 赤染衛門)がある。
守覚法親王五十首歌よみ侍りけるに
春宮権大夫公継
もみぢ葉の色にまかせて常磐木も風にうつろふ秋の山かな
よみ:もみじばのいろにまかせてときわぎもかぜにうつろうあきのやまかな 定 隠削
意味:周りの紅葉の葉に、常緑樹の常盤木も、色に染めようとする風につられてしまう秋の山だなあ
備考:守覚法親王五十首歌。本歌 秋来れど色も変わらず常盤山よそのもみぢを風ぞ貸しける(古今集 坂上是則)。