
をかくして、南に假の日がくしをさし出し
て、竹のすのこをしき其物に閼伽棚を
作り中には西の垣に添て阿弥陀
の畫像を安置し奉りて落日を請
て眉間の光とす彼帳のとびらに、普
賢ならびに不動の像をかけたり。北
の障子の上にちいさきたなをかまへて、く
ろき皮籠三四合を置。すなはち和哥
管弦往生要集ごとき抄物をいれ
たり。傍に箏琵琶をの/\一張を
たつ。いはゆるおりごと、つぎ琵琶これ也。
を隠して、南に仮の日隠しをさし出して、竹のすのこ
を敷き、その物に閼伽棚を作り、中には西の垣に添て、
阿弥陀の画像を安置し奉りて、落日を請て眉間の光と
す。彼の帳の扉に、普賢並びに不動の像を掛けたり。
北の障子の上に小さき棚を構へて、黒き皮籠三四合を
置く。すなはち、和哥・管弦・往生要集ごとき抄物を
入れたり。傍に箏・琵琶各々一張を立つ。いはゆる折
箏、継ぎ琵琶これ也。
(参考)前田家本
を隠して後、
東に三尺余りの廂をさして、芝折くぶる縁とす。南に竹の吊り棚をしてその西に
閼伽棚を作れり。北によりて絵像を安置し、側に普賢を掛け、
前に法花経をおけり。東の際に蕨の斑を敷きて夜の
床とす。南西に竹の棚を構へて、黒き皮籠三合を
置けり。即ち、和哥、管弦、往生要集如きの抄物を
いれたり。傍らに琴、琵琶各々一張を立つ。所謂、折
琴、継ぎ琵琶是也。
(参考)大福光寺本
ヲカクシテノチ
東ニ三尺余ノヒサシヲサシテシハヲリクフルヨスカトス。南タケノスノコヲシキソノ西ニ
アカタナヲツクリ北ニヨセテ障子ヲヘタテゝ阿弥陀ノ絵像ヲ安置シソハニ普賢ヲカキ
マヘニ法花経ヲゝケリ東ノキハニワラヒノホトロヲシキテヨルノ
ユカトス。西南ニ竹ノツリタナヲカマヘテクロキカハコ三合ヲ
ゝケリ。スナハチ和歌管弦往生要集コトキノ抄物ヲ
イレタリ。カタハラニ琴琵琶ヲノヲノ一張ヲタツ。イハユルヲリ
琴ツキヒワコレ也カ。

に神遊のうた
み山にはあられふるらし外山なる
正木のかつらいろづきにけり
といへるよりかきいだし
たり。
空蝉の世 荘子曰蟪
蛄不知春秋
雪をあはれむ あはれむ
といふに二義有。かなし
むといへる。一義また愛
河合神社 方丈庵の復元。実際は軽い竹柱を多用したと思われる。
