新古今和歌集の部屋

鴨長明方丈記之抄 序2 二三十人が中に

十人が中に、わづかにひとりふたり也。あし
たに死し夕にむまるゝならひ、たゞ水
泡ににたりける。しらずむまれしぬる
人何方より来りて、いづかたへか去。又
らずかりのやどり誰か為にか心を悩し
何によりてか目をよろこはしむる。其
るじとすみかと、無常をあらそひ
去様いはゞ朝がほの露にことならず
あるひは露落て花残れり。残るとい
ども朝日にかれぬ或は花はしぼみて
露猶消ず。消ずといへ共夕をまつことなし。
 
 
十人が中に、わづかに一人二人也。朝に死し夕に
生るゝならひ、たゞ水泡に似たりける。知
ず生れ死ぬる人、何方より来りて、何方へか去。
又知らず、仮の宿り、誰か為にか心を悩し何に
よりてか目をよろこはしむる。其主と栖と、無
常をあらそひ去様、いはゞ朝顔の露にことならず
或は露落て花残れり。残るといども朝日に枯れ
ぬ。或は花はしぼみて露猶消ず。消ずといへ共
夕を待つことなし。
 

(参考)前田家本
十人が中に僅かに一人二人なり。に死に夕に
生まるるならひ、ただ水の泡にぞ似たりける。知ら
ず、生まれ死ぬる人、何方より来たりて、何方へか去る。
又、知らず、借りの宿、誰が為にか心を悩まし、何に
よりてか心を悦ばしむる。その主と住み家と無
常を争ふ樣、云はば朝顔の露に異ならず。
或は露落ちて、花残れり。残ると云へども朝の日に枯れ
ぬ。或は、凋みて露猶消えず。消えずと云へども
夕をまつ事なし。

(参考)大福光寺本
人カ中ニワツカニヒトリフタリナリニ死ニ夕ニ
生ルゝナラヒ水ノアハニソ似タリケル不知
ウマレ死ル人イツカタヨリキタリテイツカタヘカ去ル
又不知カリノヤトリタカ為ニカ心ヲナヤマシナニゝ
ヨリテカ目ヲヨロコハシムルソノアルシトスミカト無
常ヲアラソフサマイハゝアサカホノ露ニコトナラス
或ハ露ヲチテ花ノコレリノコルトイヘトモアサ日ニカレ
或ハシホミテ露ナヲキエスキエストイヘトモ
夕ヲマツ事ナシ

※流布本系統の伊藤健三氏蔵 嵯峨本に一致。

 いへり 古今よみ人しらず
激つせの中にも淀は有てふを
など我恋のふちせともなき
うたかた あはのまくら
 ことば也。うたかたとばかり
 いひても泡のことなり。
 あはを世の中のはかな
 きにたとゆることは
 金剛經夢幻泡影如
 露亦如電と説給へり
玉しき 玉敷のみや
 ことは家づくりのうる
 はしきをいへり
いらか かはらのこと也。かゝ
 る美々敷人のすまゐ
 は◯〃世をへてもつ
 
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