答人
太上隠者
偶來松樹下高枕石
頭眠山中無暦日
寒盡不知年
たま/\しやうじゆのもとにきたりて、まくらを
たかふしてせきとうにねむる。さんちうれきじつ
なし。かんつくれどもとしをしらず。
世をのがれすむ◯みゝづからおじやういんじやとしようす。此詩よをのがれていくとしをかふると
か又はとしをいくつになるとかと、とはれたる人にことふる詩ならん。詩はふとまつのも●きたり
てもねむければ、いしでもまくらにしてねたりなどして、月日をゝくればゆきかへとふりとくれど●●
からはるに成たもしらず、山の中の事なれば、こよみといふ事もなし。ふかくさのけん
せんかいしごとくとしもいくつに成やうかさへた事がなければ、四十やう五十やうといふきやうかい也。
巻五終
人に答える 太上隠者
偶たま松樹の下(もと)に来たりて、
枕を高ふして石頭に眠る。
山中、暦日無し。
寒尽れども年を知らず。
意訳
たまたま松の樹の下に来て、
石の上に枕を高くして熟睡してしまった。
山中には暦日が無いので、
寒さは無くなったが、いつ年を越して春になったのかは知らない。
※高枕 安らかに熟睡する事。
※石頭 石の俗語。
唐詩選画本 巻第五 五言絶句