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新古今和歌集の部屋

歌論 無名抄 あさも川明神事

丹後の國よさの郡に、あさも川の明神と申神います。國の守の神拝とかいふ事にも、みてぐらなどえ給てまつらるヽ程の神にてぞおはすなる。是は、むかしの浦嶋の翁の神となれるとなむいひつたへたる。物さはがしくはこあけし程の心に、神と跡をとヾめ給へるは、さるべき權者などにてや有けん。


網野神社
京都府京丹後市網野町網野789
浅茂川明神山に鎮座
万葉集
水江の浦嶋の子を詠める一首并せて短歌
1740
春の日の霞める時に墨吉の岸に出で居て釣船のとをらふ見れば古の事ぞ思ほゆる。水江の浦島の子が堅魚釣り鯛釣り矜り七日まで家にも来ずて海境を過ぎて漕ぎ行くに海若の神の女にたまさかにい漕ぎ向ひ相眺ひ言成しかばかき結び常世に至り海若の神の宮の内の重の妙なる殿に携はりふたり入り居て老もせず死にもせずして永き世にありけるものを世間の愚人の吾妹子に告げて語らくしましくは家に帰りて父母に事も告らひ明日のごと吾は来なむと言ひければ妹が言へらく常世辺にまた帰り来て今のごと逢はむとならばこの篋開くなゆめとそこらくに堅めし言を墨吉に還り来りて家見れど家も見かねて里見れど里も見かねて恠しみとそこに思はく家ゆ出でて三歳の間に垣もなく家滅せめやとこの箱を開きて見てばもとの如家はあらむと玉篋少し開くに白雲の箱より出でて常世辺に棚引きぬれば 立ち走り叫び袖振り反側び足ずりしつつたちまちに情消失せぬ若くありし膚も皺みぬ黒かりし髪も白けぬゆなゆなは気さへ絶えて後つひに命死にける。水江の浦島の子が家地見ゆ。
反歌
1741 
常世辺に住むべきものを剣太刀汝が心から鈍やこの君

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