新古今和歌集の部屋

前田家本方丈記 世中の有り難9 蚕の繭を営まんが如し

このまゆをいとなまんかことし。

これをなかころのすみかになら

ふれは又百分が一におよはす。とかく

いふほとによはひはとし/\にたかく

すみかはおり/\にせはし。その家

のありさまよのつねにゝす。ひろ

さはわつかに方丈たかさは七さく

かうちなり。ところをおもひさ

ためさるかゆへに地をしめて



 

(蚕)の繭を営なまんかごとし。

これを中ころのすみかに並ぶれば、また百分が一に及ばず。

とかくいふほどに、齢は歳々に高く、すみかは折々に狭し。

その家のありさま、よの常に似ず。

広さはわづかに方丈、高さは七尺がうちなり。

所を思ひ定めざるが故に、地を占めて

 

参考 大福光寺本

コノマユヲイトナムカコトシ。

是ヲナカコロノスミカニナラフレハ又百分カ一ニオヨハス。

トカクイフホトニ齢ハ歳々ニタカクスミカハヲリヲリニセハシ。

ソノ家ノアリサマヨノツネニモニス。

ヒロサハワツカニ方丈タカサハ七尺カウチ也。

所ヲゝモヒサタメサルカユヘニ地ヲシメテ

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