一聲山鳥
曙雲
外
萬點水螢
秋草中
和漢朗詠集 郭公
発幽居将尋同志(私注での題)
全唐詩
自楞伽寺晨起 楞伽寺より晨に起きて
泛舟道中有懷 舟を泛ぶ。道中懐ひ有り
許渾
碧樹蒼蒼茂苑東 碧樹は蒼々として苑東に茂り、
佳期迢遞路何窮 佳期は迢遞として路何を窮す。
一聲山鳥曙雲外 一声の山鳥は曙雲の外、
萬點水螢秋草中 万点の水蛍は秋の草の中
門掩竹齋微有月 門は竹斎に掩ひ微かな月有り、
棹移蘭渚淡無風 棹は蘭渚に移し淡く無風
欲知此路堪惆悵 此の路の知るを欲すれど惆悵に堪へず
菱葉蓼花連故宮 菱葉蓼花故宮に連なる
※「泛」は、景宋鈔「丁卯集」では「汎」。
※楞伽寺は、蘇州の名刹。隋時代の創建と伝わる。
※山鳥は、中国の杜鵑ではなく、他の鳥。杜鵑は、中国では陰暦三月から五月に鳴き、晩春の鳥としている。
※中国の蛍は、アキマドホタルで、陰暦の八月から十月頃まで出現する。
参考
植木久行「和漢朗詠集所収唐詩注釋補訂(六)」中國詩文論叢第十二集
令和6年10月20日 弐