ちさけてみつはわきいていはほ
われてたにゝまろひいる。なき
さこくふねなみにたゝよひみ
ちゆくむまはあしのたちとを
まとはせり。みやこのほとりには
在々所々堂舎たうめうひとつ
としてまたからす。あるひは
くづれあるいはたふれぬ。ちり
はひたちのほりてさかりなる
土裂けて水は湧き出で、巌割れて谷にまろび入る。
渚漕ぐ舟波に漂ひ、道行く馬は脚の立所を惑はせり。
都の辺には、在々所々、堂舎塔廟一つとして全からず。
或は崩れ、或は倒れぬ。
塵灰立ち昇りて、盛なる
(参考)大福光寺本
サケテ水ワキイテイワヲワレテ谷ニマロヒイル
ナキサコク船ハ波ニタゝヨヒ道ユク馬ハアシノタチトヲマトワス
ミヤコノホトリニハ在々所々堂舎塔廟ヒトツトシテマタカラス
或ハクツレ或ハタフレヌ
チリハヒタチノホリテサカリナル