白
朝踏落花相伴出暮随飛鳥一時〔歸〕
後江相公
春花面〃闌入酣暢之筵晩鴬
聲〃豫参講誦之座
後江相公
落花狼藉風狂後啼鳥龍鐘雨打時
菅三品
離閣鳳翎憑檻舞下楼娃袖顧階翻
さくらちるこのしたかぜはさむからで
空にしられぬ雪ぞふりける 貫之
とのもりのとものみやつここゝろあらば
このはるばかりあさぎよめす〔な〕 公忠
春来頻與李二賓客
郭外同遊因贈長句 白居易
朝には踏て落花を相伴ち出で、暮には飛鳥に随て一時歸る。
春日侍前鎮西都督
大王読史記序 大江朝綱
春の花は面〃として酣暢(かんちょう)の筵に闌入す
晩の鴬は聲〃に講誦(こうしょう)の座に予参す
惜残春 大江朝綱
落花狼藉たり風狂して後、啼鳥龍鐘(りゅうしょう)たり雨の打時
落花還繞樹詩 菅原文時
閣を離るる鳳の翎は憑て檻(おばしま)に舞ふ、
楼を下る娃(わ)の袖は階(きざはし)を顧を翻(ひるがえる)
拾遺集
亭子院歌合に 紀貫之
桜散るこの下風は寒からで空にしられぬ雪ぞふりける
※貫之集では、「雪ぞちりける」
拾遺集
延喜御時、南殿に散りつみて
侍りける花を見て 源公忠
とのもりのとものみやつこ心あらばこの春ばかり朝ぎよめすな
※今昔物語集巻第二十四 敦忠中納言南殿桜読和歌語第三十二では、敦忠の歌となている。
躑躅
白
晩蘂尚開紅躑躅秋房初結白芙蓉
源順
夜遊人欲尋来把寒食家應折得驚
おもひいづるときはのやまの岩つゝじ
いはねばこそあれこひしきものを 平貞文
款冬
清慎公
點著雌黄天有意款冬誤綻暮春風
保胤
書窓有巻相收拾詔紙無文未奉行
題元十八渓居 白居易
晩蘂(ばんずい)尚開く紅躑躅(てきちょく)、秋房初結ぶ白芙蓉
山榴艶以 源順
夜遊(やゆう)の人は尋来て把と欲、寒食の家に折得て驚に応
古今集
題知らず よみ人知らず
思ひ出づる常盤の山の岩つつじいはねばこそあれ恋しきものを
※平貞文とあるのは和漢朗詠集のみ。
清慎公
雌黄を点著(てんちゃく)して天に意(なさけ)有り、
款冬(かんとう)誤て暮春の風に綻ぶ
題黄花 慶滋保胤
書窓巻有相收拾す。文無未だ奉行せず。
かはづなくかみなび川に影みえて
いまやさくらん山ぶきのはな 厚〔見王〕
わがやどのやへのやまぶき一えだに
ちりのこらなむはるのかたみ 兼盛
藤
〔白〕
悵望慈恩三月盡紫藤花落鳥関〃
順
紫茸偏奪朱衣應是花充忘憲〔壹〕
源相規
紫藤露底残花色翠竹煙中暮鳥〔聲〕
たごのうらのそこさへにほふふ〔ぢのはな〕
かざしてゆかむみぬひとの〔ため〕 人〔丸〕
新古今和歌集巻第二
題しらず 厚見王
かはづなく神なび川に影見えていまや咲くらむ山吹の花
かはづなく神なび川に影見えていまや咲くらむ山吹の花
よみ:かはずなくかんなびがわにかげみえていまやさくらむやまぶきのはな 隠
万葉集巻第八 1435 春雑歌
河津鳴 甘南備河尓 陰所見 今香開良武 山振乃花
万葉集巻第八 1435 春雑歌
河津鳴 甘南備河尓 陰所見 今香開良武 山振乃花
拾遺集
題知らず よみ人知らず
わが宿の八重山吹は一重だに散り残らなむ春のかたみ
※兼盛集に見えず、兼盛と言うのは和漢朗詠集のみ。
※拾遺集では、「八重の山吹」は「八重山吹は」となっている。
※「やへやまぶき」と「ひとえだに」から、本書では「一重だに」を「一枝に」にと見ている。
酬元十八三月三十日
慈恩寺見寄 白居易
悵望して慈恩に三月尽して、紫藤の花落を鳥関関たるを
於御史中 源順
紫茸の偏に朱の衣を奪ふ。是花の充憲壱を忘なる応ず。
四月有余春詩 源相規
紫藤の露の底に残花の色。翠竹の煙の中に暮鳥の声
拾遺集
たこのうらの藤の花を見侍りて
人麿
多祜の浦のそこさへにほふ藤浪をかざしてゆかん見ぬ人のため
万葉集 巻第十九
天平勝宝二年四月
十二日、遊覧布勢水海船泊於多祐湾望月藤花各述懐作歌四首
多祜乃浦能 底左倍 尓保布 藤奈美乎 加射之氐将去 不見人之為
次官内蔵忌寸縄麻呂
※拾遺集、和漢朗詠集では人丸作となっているが、万葉集では縄麻呂とある。大伴家持の越中氷見での詠なので、人麻呂とは時代が異なる。
ときはなるまつの〔な〕だてに〔あや〕なく〔も〕
かゝれるふぢのさきてちる〔かな〕 貫之
貫之集
常盤なる松の名だてにあやなくもかかれる藤の咲きて散るかな