新古今和歌集の部屋

元久詩歌合 その2

(ウェッブリブログ 2009年07月21日)

十七番 左勝    宗業
杭酒酌花遊客盃 湓魚輸税釣郎船
  右       保季
河上はまだ横雲のうす緑浪よりかすむ淀の明ぼの
 十八番 左持   宗業
江心晩浪淸浮月 湖上春山靑倚天
  右       保季
消えかねし蘆間の雪も渚よりけむみ島江の春の一入
 十九番 左    爲長
潮來海樹薺猶短 浪去汀松花不留
  右勝      雅經
かすむより緑はふかしまこもおふるみづのまさきの春のかは風
 廿番 左持    爲長
春径草靑湖北岸 曉江月白郡西樓
  右       雅經

かたしきの霞吹きみだる春風に猶さむしろの宇治の橋姫
 廿一番 左持   盛經
極浦風和遥渡岸 廻塘柳嫩僅無塵
  右       丹後
志賀の浦や打ち出でし浪の上に猶色そふる春の山かぜ

 廿二番 左持   盛經
霞光爛爛江村夕 草色靑靑湖水春
  右       丹後
わがすまぬかたもひとつにかすみけり蘆屋の里をいかでとはまし
 廿三番 左    宗行
松縣花芳輸酒地 浮梁風暖賣茶人
  右       行能
音羽川花のしがらみ春かけて岩間に色を水のしら浪
 廿四番 左    宗行
銭塘湖上曉霞薄 錦水橋邊宿草春
  右       行能

春はこれいく霞ともしら浪の跡もつきぬる志賀の夕ぐれ
 廿五番 左勝   成信
渭北煙靑斜岸草 湖東雲白遠山花
  右       具親
蘆の葉のまだうらわかき津國の小屋の隔は霞なりけり
 廿六番 左    成信
竜文水浄遥連漢 蜃気樓高半入霞
  右       具親
石上ふる川のべの柳かげめぐみもあへぬ春の色かな
 廿七番 左勝   信定
長河浸月煙波遠 孤島帶花雲樹低
  右       業淸
あさづまや雲のをちかたかすむなり花かあらぬか志賀のうら波
 廿八番 左勝   信定
江岸晴沙靑爲草 湖田春水白無畦
  右       業淸
峰の雲汀の浪に立ちなれて春にぞちぎる宇治のはし姫
 廿九番 左持   孝範
鑪岫雁歸波月白 蘇州柳暗水煙靑
  右       長明
けふも又おなじ霞や深緑かひある春の跡をたづねて
 卅番 左持    孝範
江南春樹千茎薺 湖上晩船一葉萍
  右       長明
ひばりたつみつの上野にながむれば霞ながるる淀の川なみ
 卅一番 左持   家宣
春山斜繞湖三面 夜泊先聞湖一聲
  右       良平
里わかず花咲きぬれば浪間よりみゆる小島も雲隠れつつ
 卅二番 左持   家宣
岸勢半添堤柳力 郡圖初記海花名
  右       良平
春の夜のあけのそほ舟ほのぼのといく山本をかすみきぬらん
 卅三番 左    行長
海隅求泊雲無跡 湖上停船月作隣
  右       秀能
詠むれば袖にかけけり春のよの朧月夜のすまのうらなみ
 卅四番 左    行長
楊柳一村江縣緑 煙霞万里水郷春
  右       秀能
夕づくよしほみちくらし難波江の蘆の若葉をこゆるしら浪
 卅五番 左    宗親
長堤草縷展草毯 斜岸柳絲宛麹塵
  右       俊成郷女
昔まであはれをみするつのくにの難波のおきの春の曙
 卅六番 左    宗親
渡口呼舟霞隔夕 潭心成字雁歸辰
  右       俊成卿女
春ふかき心の浪に雲消えて霞ぞなびくしがの浦風
 卅七番 左    親經
湖南湖北山千里 潮去潮來浪幾重
  右       御製
見渡せば山本かすむ水無瀬川夕は秋となに思ひけん
 卅八番 左    親經
風緑杭州春柳岸 煙靑呉郡暮江松
  右       御製
志賀の浦のおぼろ月夜の名殘とてくもりもはてぬ曙の空


鈎→釣 群書類従により改めた

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