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新古今和歌集の部屋

歌論 無名抄 晴歌一見人事

はれの哥は必人に見せあはすべき也。我心ひとつにてはあやまりあるべし。予そのかみ高松の女院の北面のきく合といふ事侍し時、戀哥に、

せきかぬるなみだの川の瀬をはやみくづれにけりな人目づヽみは

とよめりしを、いまだはれの哥などよみなれぬ程にて、勝命入道に見せ合侍しかば、
此哥大なる難あり。御門后のかくれ給をば崩ずといふ。其文字をばくづるとよむ也。いかでか院中にてよまむ哥に此言葉をばよむべき。
と申侍しかば、あらぬ哥を出してやみにき。其後女院程なくかくれおはしましにき。此哥いだしたらば、さとしとぞさたせられ侍らまし。


※高松院 姝子内親王 永治元年11月8日-安元2年6月13日 鳥羽天皇・美福門院皇女。二条天皇の中宮。

※北面の菊合 安元元年 高松院北面菊合

※勝命 しょうみょう1112~1187頃俗名は藤原親重。親賢の子。歌林苑の会衆の一人。

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