新古今和歌集の部屋

新古今増抄 巻第一 伊勢 春雨染山 蔵書

春のながめとは、春の霖雨也。物をながむる心を

そへてよめる哥なり。軒にしのぶのある躰

にて、閑中の心をあらはしたる哥なり。

増抄云。上句にとひかけて、下句にてこたへたる

哥也。つく/"\とは、なにもせずして、空をながめ

ヰたる躰也。程をふる終日の義あり。しのぶ

と云は、家もふrくなりて、軒に草の生て有躰

なり。閑中の義を顕したり。玉みづとは、軒

のしづくのとく/\とおつる躰也。しづか成由也。

一 寛平御時后宮の哥合哥     伊勢

前大和守従五位上藤原継蔭女。継蔭元

為伊勢守故為女之名。十五首

一 水の面にあやをりみだる春雨や山のみどりをなべて染らん

古抄云。水の面にあやをりみだるとは、雨ふれ

ば水うごきて、紋あれば、綾織みだると也。

水には紋をなし、山には色をそめいだせば、

春雨の所作をかんじてよめる哥也。

柳無氣力條先動池有波文氷盡開

増抄云。おるもそむるも、女工にてあれば、かく

いへり。先のみどりのあほくうるはしきを

いかなることにてかゝるぞと、不審に思ひし

比、他にあやを織みだるゝをみてされば山も

この春雨がそむるものよと、がてんしたると也。

又は同時に、春雨のしわざをいひたりと云り。

頭注
あやとはなにゝても○
文のある事なり、。
きぬのあやばかり
いふにあらず。それ
もちり/\としたる
文ある故に云也。

※古抄 幽斎増補注。

※柳無氣力條先動池有波文氷盡開 
和漢朗詠集巻上 春 立春
         白居易
柳無氣力條先動池有波文氷盡開

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