わかき子をさきだてゝ、袖をしぼる老人もあり。或ははぐゝむ親にをくれて、路頭にさすらふみなし子、或は契を結ぶ夫妻にわかれて、比翼のかたらひ空しくなり、あるは頬をかくる主君をうしなひて、眷顧の思ひたちまち反す。
又、ともにあひむかへる時には、かれをはごくみ養むとて、さま/"\の心をついやし、貧しきものは財あらんことをのぞみ、冨るものは寶のうする事を歎くといへども、心にかなふことなし。
この故に、あるにつけてもうれへ、なきにつけてもうれへずといふことなし。
又、わづかにこれかなへば、かれかくることをなげき、彼是おなじくあらんことを思へども、おもふにしががふことなし。かやうに歎きつゝ、一生はつくるといへども、希望は盡きず。