か じよか せひひ じん
哥舒歌 西鄙人
北斗七星高哥舒夜
帶刀至今窺牧馬不敢
過臨洮
ほくとひつせいたかし。かじよよるかたなをおふ。いまにいたる
までむまにまくさこふをうかふに、あヘてりんてうによぎらず。
かじよかんといふもの、西の方のゑびすちにて、むかしもからせし人なり。
◯上ゑびすをめぐみ、あわれみたるゆへ、いまにいたるまで其こうをうたに
つくりうたふなり。この詩もにしのへんぴの人のつくりたるものなり。詩は
かたなをゝびてゑびすの入こまぬやうに、ふせひだゆへ、いまにいたるまでも
◯ふゐにおそれてるに、まぐさこふにも、りんちやうふより、こちらへは
入こまぬとなり。よきらずとよみて、りんちやうへ入こまんとみるもまたよし。
哥舒歌 西鄙人
北斗七星高し。
哥舒(かじょ)夜(よる)刀を帯(お)ぶ。
今に至るまで馬に牧(まぐさこ)ふを窺ふに、
敢て臨洮(りんちょう)に過(よぎ)らず。
北斗七星は高く輝き、
そんな夜にも、哥舒将軍は刀を帯びて警護しているので、
異民族は、今に至るまで侵入する機会を窺うが、
あえて臨洮に入って来るのをはばかっているのだ。
※哥舒 玄宗皇帝時代のテュルク系民族の突騎施出身の将軍哥舒翰で、河西節度使となり、チベット族の吐蕃の侵入を抑えた。その名将を称える歌を西方の田舎人が作ったという事。安禄山の乱で敗れ、捕虜となり殺された。
※牧馬 馬を放牧する意味だが、異民族が侵入するという意味。
※臨洮 甘粛省岷県。
唐詩選画本 巻第五 五言絶句