安名尊 拍子十四、三段
一段六、二段五、三段三
あなたふと、けふのたふとさや、いにしへも、ハレ、
いにしへも、かくやありけむや、けふのたふとさ、
アハレ、ソコヨシヤ、けふのたふとさ
あな尊、今日の尊さや、古も、はれ
古も、かくやありけむや、今日の尊さ
あはれ、そこよしや、今日の尊さ
催馬楽「 安名尊」全段(一、二、三段)Saibara “ Anatoh ”
第6回 催馬楽「安名尊」
新年 拍子十四、三段
一段六、二段五、三段三
あらたしき、としのはじめにや、かくしこそ、ハレ
かくしこそ、つかへまつらめや、よろづよまでに
アハレ、ソコヨシヤ、よろづよまでに
新しき、年の始めにや、かくしこそ、はれ
かくしこそ、仕へまつらめや、万代までに
あはれ、そこよしや、万代までに
梅枝
うめがえに、きゐるうぐひすや、はるかけて、ハレ
はるかけて、なけどもいまだや、ゆきはふりつつ
アハレ、ソコヨシヤ、ゆきはふりつつ
梅が枝に、來ゐる鶯や、春かけて、はれ、
春かけて、鳴けどもいまだや、雪は降りつつ、
アハレ、ソコヨシヤ、雪は降りつつ
※古今集 春歌上
題しらず よみ人知らず
梅が枝にきゐるうぐひす春かけて鳴けども今だ雪は降りつつ
桜人 拍子二十二 二段各十二
さくらびと、そのふねちぢめ、しまつだを、とまちつくれる、みてかへりこむや、ソヨヤ、あすかへりこむ、ソヨヤ
ことをこそ、あすともいはめ、をちかたに、つまさるせなは、あすもさねこじや、ソヨヤ、さあすもさねこじや、ソヨヤ
桜人、その舟止め、島つ田を、十町つくれる、見て帰り來むや、そよや、明日帰り來む、そよや
言こそ、明日とも言はめ、彼方に、妻去る夫は、明日も真來じゃ、そよや、さ明日も真來じや、そよや
※桜 名古屋市港区辺りの地名であろう。
葦垣 三十五 五段各七
あしがきまがき、まがきかきわけ、てふこすと、おひこすと、タレ
てふこすと、たれかたれか、このことを、おやにまうよこしまうしし
とどろける、このいえ、このいえの、おとよめ、おやにまうよこしけらしも
あまつちの、かみもかみも、そうしたべ、われはまうよこしまうさず
あまつちも、かみもかみも、そうした、われはまうよこしまうさず、
すがのねの、すがな、すがなきことを、われはきくわれはきくかな
葦垣真垣、真垣かきわけ、てふ越すと、負ひ越すと、たれ
てふ越すと、誰か誰か、このことを、親に申よこし申しし
とどろける、この家、この家の、弟嫁、親に申よこしけらしも
天地の、神も神も、証したべ、我は申よこし申さず
管の根の、すがな、すがなきことを、我は聞く我は聞くかな
真金吹 二字 二段各十
まがねふく、きびのなかやま、おびにせる、ナヨヤ、ライシナヤ、サイシナヤ、おびにせる、おびにせる、ハレ
おびにせる、ほそたにがはの、おとのさやけさ、ライシナヤ、サイシナヤ、サイシナヤ、おとのさや、おとのさやけさや
真金吹く、吉備の中山、帯にせる、なよや、らいしなや、さいしなや、帯にせる、帯にせる、はれ
帯にせる、細谷川の、音のさやけさや、らいしな、さいしなや、音のさや、音のさやけさや
※古今集 神遊歌 真金吹く吉備中山帯にせる細谷川の音の清けさ とあり、その歌には承和帝仁明天皇大嘗祭吉備國之歌也とある。
山城
やましろの、こまのわたりの、うりつくり、ナヨヤ、ライシナヤ、サイシナヤ、うりつくり、うりつくり、ハレ
うりつくり、われをほしといふ、いかにせむ、ナヨヤ、ライシナヤ、さいしなや、いかにせむ、いかにせむ、ハレ
いかにせむ、なりやしなまし、うりたつまでにや、ライシナヤ、サイシナヤ、うりたつま、うりたつまでに
山城の、狛のわたりの、瓜つくり、なよや、らいしなや、さいしなや、瓜つくり、瓜つくり、はれ
瓜つくり、我を欲しと言ふ、いかにせむ、なよや、ししなや、いかにせむ、いかにせむ、はれ
いかにせむ、なりやしなまし、瓜たつまでにや、らいしなや、さしなや、瓜たつま、瓜たつまでに
催馬楽 山城 Saibara Yamashiro
竹河 拍子十四 二段各七
たけかはの、はしのつめなるや、はしのつめなるや、はなぞのに、ハレ
はなぞのに、われをばはなてや、われをばはなてや、めざしたぐへて
竹河の、橋の詰なるや、箸の詰なるや、花園に、はれ
花園に、我をば放てや、我をば放てや、少女たぐへて
河口 拍子十四 二段各七
かはぐちの、せきのあらがきや、せきのあらがきや、まもれども、ハレ
まもれども、いでてわれねぬや、いでてわれねぬや、せきのあらがき
河口の、関の荒垣や、関の荒垣や、まもれども、はれ
まもれども、出でて我寝ぬや、出でて我寝ぬや、関の荒垣
美作 拍子十五 二段 一段八、二段七
みまさかや、くめの、くめのさらやま、さらさらに、ナヨヤ、さらさらに、ナヨヤ
さらさらに、わがな、わがなはたてじ、よろづよまでにや、よろづよまでにや
美作や、久米の、久米の佐良山、さらさらに、なよや、さらさらに、なよや
さらさらに、我が名、我が名は立てじ、万代までにや、万代までにや
※久米の佐良山 今の岡山県津山市
※古今集 神遊歌 美作や久米の佐良山更々に我わが名は立てじ萬代迄に とあり、その歌には、此者,水尾帝清和天皇大嘗祭美作國之歌也とある。