新古今和歌集の部屋

唐詩選画本 赴北庭度隴思家 岑参 蔵書

 

 おもむきほくていにわたつてろうをおもふいゑを
 赴北庭度隴思家
にしのかたむかふをりんたいにはんりよまたしるきやうしん
西向輪䑓萬里餘也知郷信
ひゝにまさにそなるろうさんのおうむよくげんごせはために
日應疎隴山鸚鵡能言語為
ほうせよかじんしば/\よせよとしよを  しん/\
報家人數寄書    岑参

われこのところへゆくに、にしのかたりんたいのかたを見れはばんりよまたはる/\の事じや。こゝら
さへたよりがないに、いよ/\またしる郷信がしだいにとをざかりたよりをきく事も
なるまい。ろうざんあたりはおうむのあるところじやこれからは状文のたよりのない
処じやとおもふから、こきやうのさいしにをおこせといふてくれ大かた十のものが
ひとつならではとゝかぬひとたよりのないところじや。おふむのこと/\く
はねでもあつてとんでくるよりほかはない。くわしくは國字解を見るへし

 北庭に赴かんとし隴を度りて家を思ふ
          岑参
西のかた輪台に向かふこと万里余。
也(ま)た知る郷信日(ひび)に応(まさ)に疎なるべきを。
隴山に棲むと言う鸚鵡は、能く言語す。
為に報ぜよ、家人数(しばしば)書を寄せよと。
 
 
意訳
西の方の輪台に向かう旅路は、1万里余りの遠い道程。
又、故郷からの手紙は日々疎遠になっているのを知っている。
だから、隴山の鸚鵡よ、よく人の言葉を話すと言うから、
私の為に、家人に頻繁に手紙を寄越すようい伝えてくれ。
 
 
※北庭 新疆ウイグル自治区ウルムチ市の東方にあった都護府。天宝十三歳(754年)に作者は赴任した。
 
 
※隴 隴山。陝西・甘粛両省の境にある山。古来,長安から西域に通じる関門をなし,北西の異民族に対する隴関などの関が置かれた。
 
 
※輪台 新疆ウイグル自治区輪台県
 
※鸚鵡 オウム科(インコ科を含む)は、オーストラリア付近に棲息しており、中国北西部にはいない。
オウム科はオーストラレーシアに分布しており、その範囲はフィリピン、ワラセアのインドネシア諸島東部からニューギニア島、ソロモン諸島およびオーストラリアに及ぶ。(Wikipediaより)
従って、隴山に住むとされる鸚鵡は、人の言葉を発する架空の鳥と考えるべき。
日本国語大辞典「鸚鵡」によれば、
日本では、通例、大形の白色種をオウムと呼び、西域の霊鳥とされた。
※書紀(720)大化三年是歳(北野本室町時代訓)「来りて孔雀一隻鸚鵡一隻を献る」
と有る。
なお、人の物真似をする九官鳥は中国南部には棲息しているが、西域にはいない。
 
 
 
 
 
 
唐詩選畫本 七言絶句 巻四
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