虢州後亭送李判官使赴晉絳得秋字 岑参
西原驛路掛城頭客散江亭雨未休君去試
看汾水上白雲猶似漢時秋
くわくしうの、こうていにして、りはんくはんがつかひして、しんこうにおもむくをおくる。しうのじを得たり
せいげんのゑきろしやうとうにかゝるかくこうていにさんしてあめいまたやます
きみさつてこゝろみに見よふんすいのうへはくうんなをかんしのあきににん
後亭とはくわく
しうのしろの
うしろにあるていのことなり
西原の城より
うへに山をかけて
海道があるゆへ
かゝるといふなり
江亭まておくつてきた
客もみなかはりさひしく
なりまして雨もやます
うそさびしいじせつ道中
せらるゝさぞさひしかうふ。
扨その道すし汾水あたりに
は漢の武帝の古せきが
ある。君去てこゝろみに
見られよ。かんのときの人は
あとかたもあるまい。
白雲はかりは
漢のときにかわる
まい。楼舩をうかむと
いやうな事はあるまい。
このやうの事を見られた
ならは
いにしへをかんして
なをかなしめそふと
たり
くわしくは掌故せんちうに
あり
虢州(かくしゅう)の後亭にて
李判官の使いして晉絳に赴くを
送る。秋字を得たり。
岑参
西原の駅路、城頭に掛る。
客散じて江亭、雨未だ休(や)まず。
君去って試みに看よ、汾水の上(ほと)り。
白雲は猶、漢時の秋に似む。
意訳
君の行く、西原の街道は、険しい函谷関へ登っていくので、虢州の城壁の上に掛かっているようだ。
今日送別会に集まった連中が去っても、江亭はその名残を惜しむ悲しみの余韻で、雨が止む事は無いだろう。
君が、向こうに行ったなら、試しに看てみると良い。汾水の辺りを。
当時の面影は何も無いが、白雲だけは、漢の武帝が行幸した時の秋そのまま似ているだろう。
※虢州の後亭 河南省三門峡市一帯で、州の役所の裏の東屋
※李判官 不明。判官は節度使などの地方長官所属の役職
※汾水 山西省を南北に流れる黄河の支流。
※漢時 前漢の武帝が、汾水付近を行幸。
※得秋字 送別会の参加者にそれぞれ詩のテーマを振られ、岑参には秋の字が与えられた。
唐詩選畫本 七言絶句 巻四