新古今和歌集の部屋

養生訓 巻第三飲食上 香辛料 飲食の欲 新鮮な物 好きな物

 

 

 

 

 

 

 

 

聖人其醤を得ざればくひ給はず。是養生の道也。醤と

はひしほにあらず。其物にくはふべきあはせ物なり。

今こゝにていはゞ塩酒醤油酢生姜わさび胡椒

芥子山椒など各其食物に冝しき加へ物あり。

これをくはふるは其毒を製す也。只其味のそな

はりてよからん事をこのむにあらず。

飲食の欲は朝夕におこる故貧賤なる人もあやまり

多し。況冨貴の人は美味多き故やぶられやすし。

殊に慎むべし。中年以後元氣へりて男女の

色欲はやうやく衰ふれども飲食の欲はやまず。

老人は脾氣よはし故に飲食にやぶられやすし。

老人のにはかに病をうけて死するは多くは食傷也。

つゝしむべし。

諸の食物皆あたらしき生氣ある物をくらふべし。ふる

くして臭あしく色も味もかはりたる物皆氣を

ふさぎてとゞこほりやすし。くらふべからず。

すける物は脾胃のこのむ所なれば補となる。李笠

翁も本性甚すける物は薬にあつべしといへり。

尤此理ありされどもすけるまゝに多食すれば必やぶ

られ好まざる物を少くらふにおとる。好む物を小食

はゞ益あるべし。

 

【感想】

論語郷党第十に、
食不厭精、膾不厭細。 食は精なるを厭はず、膾は細きを厭はず。
食饐而餲、魚餒而肉敗不食。 食の饐して餲せると、魚の餒れて肉の敗れたるは食らはず。
色惡不食。臭惡不食。 色の悪しきは食らはず。臭の悪しきは食らわず。
失飪不食。不時不食。 飪を失えるは食らはず。時ならざるは食らはず。
割不正不食。不得其醤不食。 割正しからざれば食らはず。其の醤を得ざれば食らはず。
肉雖多。不使勝食氣。 肉は多しと雖も、食の気に勝たしめず。
唯酒無量、不及亂。 唯だ酒は量無く、乱に及ばず。

とある。養生訓は論語を詳しく解説している事が分かる。2千5百年前の孔子の時代も4百年前も今も変わらないと言う事か?醤(あえしお)は、醤(ひしお 醤油)だけじゃなく調味料全体を指す。塩、酒、醤油、酢、生姜、わさび、胡椒、芥子、山椒などの調味料は、食材の味や臭いの欠点をカバーして、味を調えてくれるだけじゃなく、料理の毒消しにもなると言う。確かにわさびは殺菌効果も有しているし、塩、酒、醤油、酢は殺菌効果から、食品の保存加工に用いられる。漬物食は日本人の野菜消費の多くを占めるが、食べ過ぎは塩分過多となりがちである。

飲食の欲は、貴賤老若に拘わらず、止む事が無い。慎むべし。特に中年以降、特に老人は、消化力が落ちているので、飲食で病気に成り易く、食欲を抑えて少食にすべき。老人の突然死は食あたりが多かったようで有る。

食材は新鮮な物を選び、冷蔵庫を過信してはならない。異臭変色があったら絶対に食べない事が大事。

好きな物は、自ずと胃腸に優しい物なので、健康に良いはず。明朝末清朝初期の作家、李漁は随筆閑情偶寄の中で記していると言う。しかし好きだからと言って、好きなだけ食べるのは、嫌いな物を少量食べるより健康に悪い。私は餃子(&ビール)が好きだが、多少胃が凭れる。にんにくは健康に良いのだが、消化に難が有る。世の中には辛い物が大好きな連中がいるが、辛いカレーをテレビで見ていても、とても健康に良いとは思えない。

 

 

 

養生訓巻第三  飲食上

コメント一覧

jikan314
あららぎ様
食中毒は、冷蔵庫の無い時代の食中毒は重篤な病気の病気でした。今は、冷蔵庫や保存技術が発達していても、食材に原因が有る場合が多いです。非加熱志向で、O-157やカンピロバクターやノロウイルスは、今でも重要な食中毒原因菌ですね😱。
あららぎ
父方の祖母は食中毒で亡くなっています。
昭和30年頃、私が生まれる前の話ですが。
氷で冷やす冷蔵庫しかない時代、お刺身で亡くなったそうです。
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