をくるくはけいに と ほ
贈 花 卿 杜 甫
きんじやうしくはんひゞにふん/°\。なかばはいりえふうになかばはいるくもに。
錦 城 絲 管 日 紛 〃 半 入 江 風 半 入 雲
このきよく たゞべしてんじやうにある。にんげん よくゑんいくたびかきく事を
此 曲 秪 應 天 上 有 人 間 能 得 幾 囘 聞
しよくのみやこでこのころのしくはんはなかばは江風などにしたがいなかばは雲に入て天にもひゝき見たる。この
きよくといふは、じだい民間できくすはならぬ。このやうなる音の妙なるきよくは、玄宗ごときの天子の
御きゝなさるゝきよくなれば人間世ではなが/\つね/\きくことをばならぬ花けいがござればよろしきくであると也
花けいは御かへの大将とみゆれども妓女の事に見てもよい此画は當時妓女の此詩をもて哥にいれかくする誦なり
贈花卿 杜甫
錦城の糸管、日びに紛々。
半ばは江風に入り、半ばは雲に入る。
此の曲、祗(た)だ天上に有る応(べ)し。
人間、能く幾回(たび)か聞くことを得ん。
意訳
錦官城での管弦の響きは、日毎に入り乱れて、
半分は、江風に乗って流れ、半分は、雲の中に入って行く。
この曲は、天上の世界のものであろう。
人間世界で、この樣な美しい曲を聴けるのは、何度もないであろう。
※錦城 錦官城で、四川省成都の別称。
※糸管 管弦
※秪(祗) 只と同じ。
唐詩選画本 七言絶句 巻第五