一 梅花にそへて大貳三位につかはしける
権中納言定頼 大納言公任一男母ハ四条
照平親王女 四首入
一 こぬ人によへてみつる梅花散なん後のなぐさめぞなき
増抄云。こぬ人とは三位をさしているふ成べし。
花さかりのうちは、こぬ人に花をよそへてみて
なぐさみしに、この花ちりたらばなにゝよりて
かなぐさまむ。このあわれをおもはゞ、花ちり
て猶とひきたれかしとの心なり。花の
有うちはなぐさむこともあるが、ちりてたのみ
もなき身をおもひてとへかしとねがふ
心を、ことばのほかにもたせたり作意なり。
頭注
梅花に哥をそへ
てなり。
大かたは梅のにほひ
をこぬ人の袖の
かにあやまつなり。
尤なるにこれ花
を花のすがたに
よそへたるやうにき
こゆ。されど返哥は
はたがなをざりの
袖がふれつるとあ
ればこれも香の
ことゝもきこゆ
とぞ。